内容証明郵便は一般の生活の中で頻繁に見かけることはありません。
なかには、一生涯、内容証明郵便を見ることなく過ごす人もいるほどです。
それほど日常的なものではありません。
だからこそ、どんな場面で使うのか想像できないことも出てくるでしょう。
具体的な例で考えてみると実はとても有効なことがわかります。
企業間取引の中で内容証明郵便を使うことはよくあります。
例として、買掛金の支払いに応じてくれない例で考えてみましょう。
A社はB社と取引していました。
掛け取引で、毎月末に清算し、翌月末に支払ってもらう契約を結んでいる状況です。
ところが、B社は事業がうまくいかず、支払うお金が無くなりました。
よくあるパターンです。
そこで、買掛金の支払いを3か月ほど滞納しています。
A社としては死活問題となるため、翌月15日までに全額支払うように、書類を送り求めました。
これが内容証明郵便を送るまでの流れです。
B社の立場で考えてみましょう。
1月分の買掛金を支払えない状況なのに、3か月分を支払えるわけがありません。
普通に考えて当然です。
そこで、とにかく踏み倒さなければいけない状況に陥ります。
まず書類は受け取っていない、請求されていない状況を作ろうと考えました。
つまり、書類は届いていないということにしようと考えたのです。
これで少しでも支払いを伸ばし、収入ができて少額でも返済できる状況を待とうと考えました。
この状況では、いくつかのパターンが考えられます。
状況と対応別に考えてみましょう。
結果として内容証明郵便を利用していればよかったという結論が見えてきます。
B社は書類など届いていない、内容など知らないと言い切りたい場面です。
全く知らない状況であれば、そのまま逃げ切りを図れるかもしれません。
A社が何らコピーも取っていなければ、書類の存在を証明できないことになるでしょう。
これではB社に対して何ら対抗できません。
どこかで消滅したのか、それとも送っていないのか定かではないからです。
もう何を言っても、後の祭りになってしまいました。
これは危ないなと思い、A社がコピーを取っておくことがあります。
書類はあったといえるかもしれません。
ですが、B社に対抗できるのかといえば、そうとは言えない状況です。
なぜでしょうか。
例えばA社があとから書類を作った可能性が否定できません。
A社が作った書類なのですが、どうとでもいえるからです。
書類に日付があったとしても、これを証明する方法もないでしょう。
仮に送付時点で書類はあったとしても、内容を変えていないとはいえません。
A社に都合のいいように、途中で内容を変えていたらどうでしょうか。
書類の信用性に問題が出てしいます。
こうしたことがあるからこそ、A社がコピーをとっていたとしても、法的根拠としてはかなり弱い存在なのです。
つまり、客観的な証明ができなければ、B者に対して対抗できない可能性が高いといえるでしょう。
A社では、踏み倒されるリスクが高いと判断し、内容証明郵便で送付していました。
送付した郵便局には書面のコピーが残っており、書類は途中で改ざんしていないことが証明できます。
付き合わせれば簡単にわかるからです。
それに日本郵便は、A社ともB社とも関係ありません。
いうなれば、ただの郵便局で、第三者といえる存在だからです。
ここで間違いなくB社に対して送付した事実が証明できます。
B社は第三者の証言として、対抗できません。
A社としては、書面を贈ったのだから、しっかり対応するように催促できるのです。
実は内容証明郵便は、相手方に受け取りを強制できません。
拒否されたり、そこにいなかったりすれば、内容証明郵便は返送されます。
もちろん、拒否した事実は残るため、B社に対して督促できる可能性は出てくるでしょう。
さらに受け取ったかもしれないが、存在はわからないといわれたらどうなるかという問題も出てきます。
内容証明郵便では、配達したかどうかを証明はできません。
サービスに含まれていないからです。
そこで、配達証明というオプションがあります。
書類を受け取ってもらえたことを証明できるサービスで、内容証明郵便の効力をさらに強めることができるのです。
こうなると、B社は受け取っていないとは言い逃れできません。
相手に対してしっかりとした対応を求められる状態になるのです。
ただし、これも万能というわけではありません。
実は配達証明は、誰が受け取ったかを証明できるわけではないからです。
もしかしたら、まったく知らない誰かが受け取って、配達証明が有効になった可能性も否定はできません。
それでも、内容証明郵便を使う場合には、配達証明をセットにしたほうがいいでしょう。