はじめに
こんにちは、東京深川行政書士事務所です。
裁判では証拠が必要なことはおわかりだと思いますが、個々の具体的な裁判となった場合に、どのような証拠があれば良いかは、なかなか理解できないですよね。
そこで今回は、裁判の際どのような証拠があれば良いかについて、基本となる知識をお伝えします。
裁判には、民事裁判と刑事裁判がありますが、ここでは民事裁判について取り上げることにします。
民事裁判では、事実を立証しなければならない側が、通常人が疑いをさしはさまない程度の「高度の蓋然性」があることを立証する必要があります。
この事実を立証するための材料(資料)が証拠なのです。
そうしますと、何の事実を立証する必要があるかによっても、証拠が違ってくることになります。
以下では、具体的な事例ごとに、裁判の際どのような証拠があれば良いかについて考えてみましょう。
1)貸金返還請求の場合
- 「金銭消費貸借契約書」、「借用書」あるいは「受取書」という証拠があれば、被告がお金を借りたという事実を争うのは通常難しいと考えられますので、これらの証拠があれば良いといえましょう。
- 借用書等を取り交わさなかったときはどうでしょう。
被告が、名刺やメモの裏に「借用の事実」を記載してサインしたものがあれば、証拠として十分といえます。
また、金銭の貸借の場に立ち会った証人が、「被告が借用した事実」を証言すれば、被告がお金を借りた事実が認められます。
原告の銀行から被告の銀行口座に振込送金して貸した場合には、その送金伝票(振込明細書の控え)があれば、金銭の貸借の事実は十分認められます。
2)売買代金支払請求の場合
- 「売買契約書」、「商品受領書」、「納品書」あるいは「代金請求書の控え」という証拠があれば、被告が商品を買い受けたという事実を争うのは通常難しいと考えられますので、これらの証拠があれば良いといえましょう。
- 1.記載の書類がない場合には、売掛台帳、売上帳、伝票などの証拠があれば、それらが架空取引のものという立証がなされない限り、売買の事実は認められるといえます。
3)不貞行為に基づく損害賠償請求の場合
- 探偵事務所や興信所による、いわゆるラブホテルに出入りしている写真のある調査報告書があれば、不貞の事実を争うのは難しいと考えられますので、この証拠があれば良いといえます。
- 配偶者が不貞行為を認めた念書(不貞開始の時期、不貞行為の期間・回数、不貞の相手方の氏名や職業、不貞の相手方と出会った経緯、不貞の相手方は配偶者が結婚していると知っていたかどうかなどを記載したもの)に、作成年月日と配偶者の署名があれば、不貞行為の事実は認められるといえます。
4)土地・建物の所有権移転登記請求の場合
- 当該土地・建物の登記事項証明書、売買契約書、領収証(代金を支払ったことを証明するもの)があれば、当該土地・建物の移転登記を求めるのには十分な証拠といえます。
- 売買契約書がない場合には、立証の困難を伴うことも予想されますが、売買契約に立ち会った証人が、「売買契約の存在」を具体的に証言すれば、原告が被告から当該土地・建物を買い受けた事実が認定でき、当該土地・建物の移転登記が認められるといえます。
5)建物の明渡請求の場合
- 建物の所有者が賃貸借契約に基づいて、賃料不払のため信頼関係が失われたことを理由に借主に対して、当該建物の明渡を請求する場合は、当該建物の登記事項証明書、当該建物の賃貸借契約書、契約で定められた賃料が継続して入金されていないことを示す銀行口座通帳、契約解除を通知する内容証明郵便があれば、当該建物の明渡を求めるのには十分な証拠といえます。
- 無断転貸借や契約に定めた使用方法に違反していることを理由に、借主に対して当該建物の明渡を請求する場合も、その立証は賃料不払と同様に、比較的容易といえます。
しかし、更新拒絶または解約申入れを理由に当該建物の明渡を請求する場合は、「正当の事由」があると認められる場合でなければ、更新拒絶または解約申入れをすることができないため(借地借家法26条・27条・28条)、どのような証拠によりその立証を行うかは難しい問題といえます。
6)交通事故による損害賠償請求の場合
- 交通事故の訴訟では、多くは、運転者(責任原因が民法709条)、加害車両の保有者(責任原因が自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」といいます)3条本文)、運転者の使用者(責任原因が民法715条1項本文)が被告とされます。
責任原因が自賠法3条の場合、いわゆる「運行供用者」は、加害者側は運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者側に故意または過失があったこと、自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったことを立証しない限り、損害賠償責任を負わなければなりません。
- しかし、運転者を被告とする場合には、原告(被害者本人または死亡した被害者の相続人)側が、被告に故意または過失があったことを主張立証しなければなりません。
- 交通事故による損害賠償請求の場合、事案に応じて、必要な証拠が違いますが、以下のような証拠があれば良いといえるでしょう。
ア 人損・物損共通
- 交通事故証明書、事故車両の写真(全体および破損部分)、事故現場の道路の写真(撮影者、撮影日時および撮影方向図を付記)、ドライブレコーダー(事故前後の映像や走行データを記録する装置)の記録
イ 人身損害
- 診断書(自賠責の定型書式のもので、入通院期間、通院実日数、付添看護の必要性および期間、個室使用の必要性および期間、特殊治療(鍼灸・カイロプラクティック等)の必要性、装具装着の必要性の記載のあるもの)
- 診療報酬明細書(自賠責の定型様式のもの)
- 後遺障害診断書、後遺障害等級認定説明書(自賠責)
- 付添看護費の領収証
- 通院交通費(バス、電車の利用については原告作成の明細書、タクシー利用については必要性に関して、障害の程度・態様、医療機関と自宅の位置関係等に関する被害者本人の陳述書および領収証)
- 自宅等改造費用の図面・領収証(改造後の写真も併せて提出)、車椅子・義肢・装具・特殊車両等の領収証
- 休業損害証明書、事故前年の源泉徴収票、事故前年の確定申告書控え(税務署の受付日付印のあるもの)、市区町村長の納税証明書または課税証明書(所得額の記載のあるもの)など事故前の収入を立証できる書証
- 戸籍謄本
ウ 物件損害
- 自動車検査証
- 車両等修理費用の領収証(修理未了の場合は見積書)
- 事故減価額証明書(日本自動車査定協会等)
- 自動車価格月報(レッド・ブック)(全損の場合や時価が修理費用を超えることの証明を要する場合)
- 代車両の領収証
- 車両以外の被害動産・不動産の写真・価格表・修理費用の領収証等
エ 被告が、事故態様、双方の過失の有無・割合を争うことが予想される場合
オ 被告が、傷害・後遺障害の有無・程度、事故との因果関係等を争うことが予想される場合
- 診療録(訳文を付記し、頁番号をふったもの)、レントゲン写真等
まとめ
裁判の際どのような証拠があれば良いかについては、6つのケースを紹介しましたが、おわかりいただけたでしょうか。
民事裁判では事案ごとに必要な証拠が違ってきますが、行政書士は、多くの分野で重要な書類作成に携わっています。
書類の作成でお困りの場合は、行政書士などの専門家にご相談されることをおすすめします。
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