行政書士として日々様々なご相談をお受けしている中で、最近特に増えているのがインターネット上の出会いに関連するトラブルです。スマートフォン一つで誰かと繋がれる便利な時代になりましたが、その一方で安易な約束が大きな法的紛争に発展してしまうケースも少なくありません。
今回は、多くの方が一度は経験したことがあるかもしれないドタキャンという行為に焦点を当てて、それが法律的にどのような意味を持つのか、そしてどのような場合に深刻な事態を招くのかについてお話しします。
この記事では、出会い系サイトやマッチングアプリにおけるドタキャンが、単なるマナー違反で済む場合と、法的な賠償責任や犯罪に該当してしまう場合の境界線について解説します。具体的にどのような証拠を残すべきか、またトラブルが発生した際に行政書士がどのような書類作成を通じて皆様をサポートできるかについても詳しく触れていきます。
ここで一つ、架空の事例をご紹介します。
都内在住の会社員であるAさんは、マッチングアプリで知り合ったBさんと意気投合し、連休を利用して遠方の観光地で会う約束をしました。Bさんは、会うための新幹線代が足りないと言い、Aさんは親切心から往復のチケット代として数万円を電子マネーで送金しました。しかし、待ち合わせ当日になってもBさんは現れず、連絡も一切取れなくなってしまいました。
数日後、Bさんから連絡がありましたが、その内容は、急な用事で行けなくなったという謝罪ではなく、さらなる金銭の要求でした。Bさんは、自分の正体がバレるのが嫌ならもっとお金を払えとAさんを脅し始めたのです。Aさんは単なるドタキャンだと思って我慢しようとしましたが、金銭を騙し取られただけでなく、さらなる被害に遭いそうになったため、法的な対応を検討することになりました。
このようなケースでは、最初から会う意思がなかったにもかかわらず金銭を受け取っているため、単なる約束破りではなく犯罪の可能性が極めて高くなります。
ここで、今回のテーマを理解するために重要な二つの用語について解説します。
一つ目は不法行為です。これは、故意または過失によって他人の権利や利益を侵害する行為を指します。もし不法行為が認められれば、被害を受けた側は加害者に対して、発生した損害を金銭で補うよう求めることができます。ドタキャン自体が直ちにこれに該当することは稀ですが、相手を陥れる目的があったり、過度な嫌がらせが伴ったりする場合には、慰謝料などの請求対象となることがあります。
二つ目は内容証明郵便です。これは、いつ、どのような内容の手紙を誰が誰に送ったのかを郵便局が公的に証明してくれるサービスです。相手に対して法的措置を検討していることを正式に伝えたり、金銭の返還を強く促したりする際に非常に有効な手段となります。行政書士は、この内容証明郵便の作成のプロフェッショナルとして、皆様の主張を論理的に構成するお手伝いをします。
通常、友人同士や知人間でのドタキャンは、道徳的な問題として片付けられます。しかし、法的な損害賠償が発生する可能性があるのは、相手の行為によって実害が生じた場合です。例えば、デートのために高額なレストランを予約し、キャンセル料が発生した場合や、遠方から来る相手のために宿泊費を立て替えていた場合などが考えられます。
ただし、日本の法律では、恋愛感情が絡む個人的な約束については、公序良俗の観点から法的な拘束力を認めにくいという側面もあります。そのため、単に会えなくて悲しいという理由だけで慰謝料を取ることは容易ではありません。重要なのは、そのドタキャンに付随して、明確な金銭的被害や社会的信用の失墜があるかどうかです。
最も警戒すべきなのは、ドタキャンが詐欺の一部として利用されているケースです。事例でも挙げたように、会う前の交通費や準備費用を理由に送金を依頼し、お金を受け取った瞬間に音信普通になる手口は典型的な詐欺の手法です。これは刑法上の詐欺罪に該当する可能性があり、警察の捜査対象にもなり得ます。
また、ドタキャンをした側が、逆に相手を脅すケースも存在します。待ち合わせ場所に来なかったことを棚に上げ、やり取りの内容を周囲にバラすと言って口止め料を請求するような行為は、恐喝罪という重い罪に問われる可能性があります。ネット上の出会いでは相手の本名や住所が分からないことも多いため、このような強気な態度に出る加害者が後を絶ちません。
被害を未然に防ぐためには、まず利用しているサイトやアプリの規約を熟読することが大切です。多くのサービスでは金銭の直接的なやり取りを禁止しており、それを守ることが自分を守ることにも繋がります。
もしトラブルが起きてしまったら、最も重要なのは証拠の保全です。相手とのやり取りの履歴、通話の記録、金銭を支払った際の領収書や振込明細、待ち合わせ場所での状況がわかる写真など、客観的な記録は全て保存しておいてください。メッセージを消去されてしまう前にスクリーンショットを撮っておくことが、後の法的対応において決定的な役割を果たします。
まず最初に行うべきは事実の整理です。いつ知り合い、どのような約束をし、いつドタキャンされたのかを時系列でまとめます。次に、金銭的な被害がある場合はその金額を正確に算出します。
もし詐欺や恐喝の疑いがある場合は、迷わず警察に相談することをお勧めします。その際、行政書士は、警察に提出する被害届の基礎となる事実関係の整理や、告訴状などの書類作成をサポートすることができます。また、相手に対して冷静にこちらの意思を伝えるために、先ほど説明した内容証明郵便を送付することも検討すべきステップの一つです。
私たち行政書士は、トラブルを法的に整理し、書類を作成することで解決への道筋をつくる専門家です。相手との話し合いがまとまった際には、後日になって言った言わないの争いにならないよう、合意書や示談書を作成し、解決の内容を形に残すことができます。これにより、将来的な再発防止を図ることが可能になります。
もちろん、相手と激しく争うことになり、裁判所での訴訟や交渉の代理が必要になった場合には、弁護士の出番となります。当事務所では、事案の深刻さに応じて、信頼できる弁護士と連携を取りながら対応できる体制を整えています。初期段階での事実整理を行政書士に依頼しておくことで、もし訴訟になった場合でもスムーズに手続きを引き継ぐことができるというメリットがあります。
出会い系サイトでのドタキャンは、時にはマナー違反の枠を越え、深刻な法的トラブルや犯罪へと繋がることがあります。相手から不当な金銭要求を受けたり、逆に支払ったお金が返ってこなかったりする場合は、一人で悩まずに専門家に相談してください。
トラブル解決の鍵は、迅速な初期対応と正確な証拠の記録にあります。もし今、何らかの不安を感じているのであれば、まずは事実を整理することから始めてみましょう。当事務所では、内容証明郵便の作成や合意書の作成を通じて、皆様が平穏な日常を取り戻せるよう全力でバックアップいたします。どのような些細なことでも構いませんので、まずはご相談いただければと思います。