ご自身の大切な財産を、将来を担うお子様やお孫様へと引き継ぐ
「生前贈与」
は、円満な財産承継と計画的な相続税対策の両面から、非常に重要な手段です。
特に金銭の贈与では、
など、税法上のメリットを上手に活かしたいとお考えの方も多いのではないでしょうか。
一方で、税務署との関係で最も問題になりやすいのが、贈与の
「形式」
です。
「単に親の口座から子の口座へ資金を移しただけ」の状態では、税務調査の際に真の贈与ではなく、
親が支配する名義預金
と判断され、多額の贈与税が課税されるリスクがあります。
また民事上も、
「本当に贈与があったのか」「金額はいくらだったのか」
といった点が他の相続人との争いの火種となりかねません。
こうしたリスクを避け、親御様の
「贈与したい」
という意思と、お子様の
「受け取りたい」
という意思を、
法的にも税務上も明確にしておくために不可欠
なのが、
金銭贈与契約書
の作成です。
本記事では、贈与契約書の法的な意義と、証拠力をさらに高める
公正証書
の活用方法について、専門家の視点から詳しく解説します。
金銭贈与契約書を作成する目的は、大きく分けて次の二つです。
税務署が「贈与があった」と認めるかどうかを判断する際には、
という三点が厳しくチェックされます。
単に資金を移動しただけでは、親が通帳や印鑑を管理し、いつでも引き出せる状態にあると判断され、
「名義預金」
として贈与否認されることがあります。
これを避けるための決定的な証拠が、贈与契約書です。
契約書には、次のような事項を明確に記載します。
特に暦年贈与を行う場合は、
毎年必ず契約書を作成し、その年の贈与が完了した証拠を残すこと
が非常に重要です。
生前贈与をめぐっては、遺産分割の場面で、
といった主張がなされることが少なくありません。
金銭贈与契約書を作成しておけば、その金銭が単なる援助(仕送り等)ではなく、
法的に有効な贈与であること
を客観的に示すことができます。金額や時期が明確になっていることで、他の相続人に対する説明・調整も格段に行いやすくなります。
ここでは、親子間で長年にわたり金銭のやり取りがあったにもかかわらず、
贈与契約書を作成しなかったため
に、多額の贈与税が課税されてしまった架空の事例をご紹介します。
親であるAさんは、ご自身の相続税対策として、10年間にわたり毎年110万円を、子であるBさん名義の銀行口座へ振り込んでいました。Aさんとしては、
「毎年、非課税枠内で贈与している」
つもりでしたが、
といった状況でした。
10年後、Aさんの相続が発生し、税務調査が入りました。税務署は、過去のBさん口座への入金について詳細に確認し、次のように判断しました。
その結果、
「これはAさん名義の相続財産と同視される名義預金であり、Bさんへの贈与は成立していない」
と認定されました。
そして、Aさんが死亡した時点で、過去10年分の金銭がAさんの相続財産に含められた上、本来分割して行われるべきだった贈与が、
一括贈与として扱われ、高額な贈与税が課税
される結果となってしまいました。
相続税対策のつもりで行ったはずの暦年贈与が、適切な契約書や管理体制を欠いていたために、かえって大きな税負担を招いた典型的な例と言えます。
金銭贈与契約書を作成するにあたり、まずは民法上の
「贈与」
の定義と、税務署が特に重視するポイントを確認しておく必要があります。
民法上、贈与契約とは、
によって成立する契約です。
贈与契約は原則として
諾成契約
(双方の合意のみで成立する契約)であり、口頭でも成立します。しかし、ここで問題となるのが、民法第550条の規定です。
民法第550条 書面によらない贈与は、当事者の一方において、これを取り消すことができる。 ただし、既に履行を終わった部分については、この限りでない。
この条文により、書面によらない贈与については、
履行前の部分は贈与者が一方的に撤回できる
ことになります。
一方、書面(贈与契約書)にしておけば、原則として贈与者は一方的に撤回できません。贈与者の意思を確定し、受贈者の権利を安定させるうえで、
書面化には非常に大きな意味
があります。
税務上問題となる名義預金を避けるための最大のポイントは、
受贈者による自由な管理・使用
があるかどうか、という点です。
たとえ贈与契約が成立し、金銭が受贈者名義の口座に振り込まれたとしても、
といった状態では、「実質的には贈与者の財産」であると判断されかねません。
このリスクを避けるためには、贈与契約書の中で、
を明記するとともに、実際に通帳やキャッシュカードの管理を受贈者に移しておく必要があります。
親子間の金銭贈与契約書は、
の両方を意識して作成する必要があります。以下に、暦年贈与を想定した一例を挙げます(あくまで参考例であり、実際の契約書作成には専門家の個別検討が必要です)。
金銭贈与契約書 贈与者 〇〇(以下「甲」という。)と受贈者 〇〇(以下「乙」という。)は、 以下のとおり金銭贈与契約(以下「本契約」という。)を締結した。 (第一条 贈与の目的物および金額) 甲は乙に対し、金壱百拾万円(1,100,000円)を贈与することを約し、 乙はこれを受諾した。 (第二条 履行期および履行方法) 甲は、前条の金員を令和〇年〇月〇日限り、 乙名義の銀行口座に振り込む方法により履行する。 乙は、甲から贈与を受けた金員を、自己の責任と判断に基づき、 自由に管理し、使用するものとする。 (第三条 本契約の意義) 甲および乙は、本契約が、甲による乙に対する 令和〇年分の暦年贈与を目的とするものであることを確認する。 令和〇年〇月〇日 甲 住所: 氏名: ㊞ 乙 住所: 氏名: ㊞
このように、
を明確にしておくことで、税務上の有効性を高めることができます。
さらに、これを公証役場で
公正証書
として作成することで、法律の専門家である公証人が内容と当事者の意思を確認したという強力な証拠となります(※金銭贈与契約自体は通常、強制執行力の対象とはなりませんが、証拠力は私文書より格段に高くなります)。
親子間の金銭贈与契約は、愛情に基づく行為であると同時に、
税法と民法が深く関わる高度な法的手続き
でもあります。
インターネット上のテンプレートをそのまま使用しただけでは、
を十分に排除することはできません。
専門家である行政書士に契約書作成を依頼することは、単に
「紙を作ってもらう」
ということにとどまりません。実際には、
などを通じて、
将来の安心を前もって購入する行為
に近いと言えます。
親から子へ、大切な財産を
確実かつ円満に引き継ぎたい
とお考えでしたら、ぜひ一度ご相談ください。
金銭贈与契約書、とりわけ
公正証書としての作成
は、当事務所の主要な取扱業務の一つです。お客様のご事情・ご希望を丁寧にお伺いし、
まで、一貫してサポートいたします。
ご相談は、
からお気軽にお寄せください。お忙しい方でもご負担なくご利用いただけるよう、
迅速な返信と、依頼者様の立場に立った丁寧な対応
を心がけております。
大切な財産を守り、次世代への円満な承継を実現するために、専門家として全力でお手伝いさせていただきます。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。