デートの約束を直前でキャンセルされる、いわゆるドタキャンは、心情的に非常に辛いものです。それだけでなく、予約していたお店のキャンセル料など、具体的な金銭的被害が発生することもあります。行政書士として多くのご相談をいただく中で、こうした個人間の約束破りが法的なトラブルに発展するケースは少なくありません。今回は、デートのドタキャンが法的にどのような扱いになるのか、そして損害を補填してもらうための条件について分かりやすく解説します。
この記事を読んでいただくことで、デートのドタキャンが損害賠償の対象になる具体的な条件や、請求のために準備すべき証拠、そして行政書士がどのような書類作成でサポートできるのかが分かります。
ここで一つ、具体的な場面を想定してみましょう。
会社員のAさんは、以前から気になっていたBさんを食事に誘いました。二人は話し合いの結果、夜景のきれいな高級レストランを予約することに決めました。そのお店は完全予約制で、当日のキャンセルにはコース料金の全額が違約金として発生するという規定がありました。AさんはそのことをBさんにも伝え、二名分で合計六万円の予約を完了させました。
しかし当日、待ち合わせの三十分前になって、Bさんから今日は気分が乗らないので行かないという一行だけのメッセージが届き、それ以降の連絡が途絶えてしまいました。Aさんはお店に対してキャンセル料の六万円を全額支払うことになり、楽しみにしていた時間だけでなく多額の金銭を失う結果となりました。Aさんは、せめてBさんの分である三万円だけでも支払ってほしいと考えています。
このようなケースを考える上で、理解しておきたい重要な用語が二つあります。
一つ目は不法行為です。これは、わざと、あるいは不注意によって他人の利益を不当に侵害する行為を指します。デートを断ること自体は自由ですが、相手に損害が出ると分かっていながら身勝手な理由で直前に拒絶し、相手に金銭的な損害を負わせた場合には、この不法行為に該当する可能性が出てきます。
二つ目は公序良俗です。これは社会的な道徳や良識あるルールのことをいいます。あまりにも不誠実な対応や、相手を陥れるようなドタキャンは、この社会的なルールに反しているとみなされ、法的な責任を追及する際の一つの判断基準となります。
一般的に、ただのデートの約束は法的な契約ではありません。そのため、約束を破ったからといってすぐに慰謝料を払わせることは難しいのが現実です。しかし、Aさんの事例のように、具体的なお金の被害が出ている場合は話が別です。 レストランのキャンセル料や、あらかじめ買っておいた高額なチケット代、宿泊施設の予約金などは、積極的損害として請求の対象になり得ます。ただし、請求が認められるためには、その予約を相手も承知していたことや、ドタキャンによってそのお金が無駄になったというはっきりとした証拠が必要です。 一方で、心の傷に対する慰謝料については、非常にハードルが高くなります。単にショックを受けたというだけでは難しく、相手が最初から騙すつもりだった場合や、結婚を前提とした特別な関係であった場合など、よほど悪質なケースに限られます。
もし相手に対して費用の負担を求めたいのであれば、客観的な証拠を集めることが不可欠です。まず大切なのは、約束の存在を示す記録です。メッセージアプリやメールなどで、いつ、どこで会う約束をしたのか、予約の内容を共有していたかといったやり取りをスクリーンショットなどで保存しておきましょう。
次に、実際に支払った金額を証明するものです。お店からの領収書や、予約時の規約が書かれたメール、クレジットカードの利用明細などがこれに該当します。最後に、ドタキャンを告げられた時間や、その後の連絡の状況がわかる履歴も残しておくようにしてください。
相手と連絡は取れるものの、支払いを渋られているような場合、行政書士は書類作成を通じて解決をサポートします。一つは、内容証明郵便の作成です。これは、自分の主張を法的な根拠に基づいてまとめ、公的な記録として相手に送り届けるものです。口頭での督促よりもこちらの真剣な姿勢が伝わり、相手が冷静に話し合いに応じるきっかけになります。 また、話し合いの結果、相手が支払いに同意した場合には、示談書を作成することが重要です。いつまでにいくら支払うのか、今後はお互いにこの件で文句を言わないといった約束をしっかりと書面に残すことで、後々の再トラブルを防ぐことができます。
ここで、行政書士と弁護士の違いについても触れておきます。行政書士の役割は、あくまで権利義務に関する書類を作成し、円満な解決を後押しすることにあります。相手と直接会って交渉したり、裁判所へ行って代理人として戦ったりすることはできません。 もし相手が全く支払いに応じず、裁判で決着をつけるしかないという状況になった場合は、弁護士へ依頼することになります。当事務所では、まずは書類作成による早期解決を目指しますが、事案の深刻さに応じて適切なアドバイスや他職種との連携も考慮いたします。
デートのドタキャンで損害賠償を求めることは、決して不可能なことではありません。特にキャンセル料などの具体的な金銭被害がある場合は、証拠を揃えることで支払いを求められる可能性があります。ただし、感情的になって相手を攻撃するのではなく、何が起きたのかを冷静に整理し、事実に基づいた対応をすることが解決への近道です。
もし、高額なキャンセル料が発生して困っている、あるいは相手と合意できたので正式な書面を作っておきたいという場合には、ぜひ一度ご相談ください。行政書士として、皆様が納得できる解決へ向かえるよう、書類作成の面から丁寧にお手伝いさせていただきます。