【2026年夏更新】架空請求は無視していい?|無視して問題ない3条件と、払ってしまった後にできること

2026年夏更新
最終更新日:2026年7月26日 / 監修・執筆:行政書士(登録番号:第22080418号)

スマホに届いた「未納料金があります」というSMS。封筒で届いた見覚えのない請求書。結論から言えば、架空請求の大半は、連絡せず・払わず・記録だけ残して無視するのが正解です。連絡した瞬間に「反応する番号」として名簿に載り、請求が増えるためです。

ただし、無視すると一気に不利になるケースが4つだけあります。特に、裁判所から届く「特別送達」を架空請求と勘違いして捨ててしまうと、身に覚えのない借金が確定し、給与や預金を差し押さえられることさえあります。実際に、支払督促という裁判所の制度を悪用した架空請求も報告されています。

この記事は、①いま無視していいのかを3分で判定し、②払ってしまった場合の回収手順を決済手段別に示し、③「架空請求だと思ったら本物の古い請求だった」場合の対処までを一本でカバーします。年間約1,000件の内容証明相談を受けている行政書士が、実務でよく見る失敗パターンを含めて整理しました。

1. まず3分で判定|あなたに来た請求は3タイプのどれか

「架空請求」と一口に言っても、実務上は性質のまったく異なる3タイプが混ざっています。対応を間違える人の大半は、この見分けをせずに動いています。

タイプ 見分け方 取るべき対応
A:完全な架空 差出人も債権の中身も特定できない。SMS・メールのみ。リンクや電話番号への誘導がある 無視・保存・無反応
B:実在事業者との争い 実在する会社名で、契約日や商品名が具体的。ただし契約した覚えがない、または解約済みのはず 事実確認のうえ、債務不存在の通知を検討
C:古い本物の債権 数年〜十数年前に自分が契約した可能性がある。債権回収会社(サービサー)名義のことが多い 安易に連絡せず、消滅時効の可能性を検討

最も危険なのはCをAと誤認すること

Cを「どうせ架空請求だろう」と決めつけて放置すると、裁判手続に進まれて敗訴が確定することがあります。逆に、慌てて相手に電話して「少しずつなら払います」と言ってしまうと、時効が完成していた債権でも支払義務が復活しうる(債務の承認)という、取り返しのつかない失敗になります。詳しくは8章で解説します。

*AとBの区別は、差出人名を検索し、その企業の公式サイトに掲載された代表電話・住所と照合すれば大半がつきます。照合先は必ず、請求書やSMSに書かれた連絡先ではなく、自分で検索して見つけた公式サイトを使ってください。

2. 結論|架空請求は「無視・保存・無反応」の3点セットで足りる

タイプAと判定できたなら、やることは3つだけです。

架空請求への基本対応

① 無視する - 返信しない、電話しない、リンクを開かない

② 保存する - SMS・メール・封筒・請求書をすべて保管。スクリーンショットも撮る

③ 無反応を貫く - 相手が催促を重ねても反応しない。着信は拒否設定でよい

なぜ無視で足りるのか。理由は2つあります。

第一に、存在しない債権には支払義務がありません。民法上、金銭の支払義務は契約や不法行為など法律で定められた原因から生じます。相手が一方的に「払え」と言っただけでは義務は生まれません。

第二に、架空請求業者は法的手続を取ってこないのが通常です。裁判を起こせば申立人の身元が裁判所に残り、自らが摘発される端緒になります。彼らのビジネスモデルは「反応した人だけを深追いする」ことで成立しているため、無反応の相手には手間をかけません。

逆に言えば、一度でも反応すると「実在する・反応する連絡先」として評価が上がり、請求が増えます。これが「無視が最良」と言われる実質的な理由です。

*書面やSMSは、絶対に削除・破棄しないでください。後日、同じ業者から繰り返し請求が来た場合や、警察・消費生活センターに相談する場合の資料になります。日付順にフォルダにまとめておくだけで十分です。

3. 無視して問題ない3つの条件

次の3条件がすべて揃っていれば、タイプAとみて無視して差し支えありません。

条件1:差出人が特定できない、または実在が確認できない

屋号だけで法人格の記載がない、住所がビル名までで部屋番号がない、代表者名がない、といったものは架空請求の典型です。国税庁の法人番号公表サイトや、その会社名の公式サイトで所在地を照合すると判別できます。実在の企業名を無断で使うケースもあるため、「実在する会社名だった=本物」ではない点に注意してください。

条件2:何の代金なのかが特定されていない

「有料コンテンツ未納料金」「情報サイト利用料」のように、いつ・どのサービスを・いくら利用したのかが書かれていない請求は、そもそも債権として特定されていません。本物の請求であれば、契約日、契約者名、商品名、請求根拠が必ず記載されます。

条件3:SMS・メールのみで、正式な書面が届いていない

現在の架空請求は、送信コストがゼロに近いSMS・メールが中心です。郵送は費用がかかるため、無差別に送る手口とは相性が悪い。SMSやメールしか来ていない段階なら、まず架空請求と考えて構いません。

3条件が揃っても、これだけは守る

届いた書面・画面は捨てない。相手の連絡先には触れない。そして、同じ内容が「封書」で届いたら、その時点で判定をやり直す。この3点だけ意識してください。

4. 無視してはいけない4つの例外【最重要】

この章が、この記事でいちばん重要です。次の4つに当たる場合、無視は最悪の選択になりえます。

例外1:裁判所から「特別送達」で書類が届いた

支払督促や訴状は、郵便局員が名宛人に直接手渡す「特別送達」という方法で届きます。これを放置すると、相手の言い分どおりの結果が確定します。

支払督促の場合、受け取った日から2週間以内に督促異議を申し立てないと、債権者の申立てにより仮執行宣言が付され(民事訴訟法391条)、給与や預貯金の差押えに進みうる状態になります。身に覚えがまったくない請求であっても、この2週間を過ぎると挽回のハードルが跳ね上がります。国民生活センターも、支払督促の制度を悪用した架空請求の存在に注意喚起しています。

確認ポイント 見方
封筒の表記 「特別送達」と印字され、郵便局員から手渡しで交付される。ポストへの投函や、メール便・宅配便で届くものは裁判所からの正式な書類ではありません
裁判所名 記載された裁判所名を、裁判所ウェブサイトで検索し、代表電話番号を自分で調べて確認する。書類に書かれた電話番号にはかけない
同封物 本物の支払督促には、異議申立ての方法の説明と「督促異議申立書」の書式が同封されています

*業務範囲について。支払督促への異議申立てや訴訟対応は、行政書士の業務範囲外です。当事務所では対応できません。特別送達が届いた場合は、期限が短いため、ただちに弁護士または認定司法書士にご相談ください。裁判所の書記官室に電話して事件番号を確認することもできます。

例外2:実際にそのサービスを利用した可能性がある

解約したつもりで手続が完了していない定期購入、退会できていないサブスク、無料期間後に自動課金される契約。これらは「架空請求ではなく、本物の未払い」である可能性があります。放置すれば延滞損害金が積み上がり、信用情報に影響することもあります。

確認手順は次のとおりです。カード明細・口座履歴を過去12か月分さかのぼる。メールを「ご登録ありがとうございます」「決済完了」で検索する。そのサービスの公式サイトからマイページにログインし、契約状況を確認する。この3つで大半は判明します。

例外3:すでに個人情報を渡してしまった

折り返し電話をした、氏名・住所・生年月日を伝えた、身分証の写真を送った。この場合、相手は「反応する実在の人物」として名簿を作ります。今後、別の業者名で二次被害の勧誘(「あなたの被害金を取り戻します」という詐欺)が来ることも珍しくありません。無視ではなく、警察相談専用電話(#9110)と消費者ホットライン(188)に相談し、記録を残してください。

身分証の画像を送ってしまった場合は、それが別の犯罪に使われるおそれがあります。速やかに警察に相談し、必要に応じて本人確認書類の再発行を検討してください。

例外4:数年前に自分が契約した債権かもしれない

債権回収会社(サービサー)や聞いたことのない社名から、10年近く前の借入・通販代金を請求されるケースです。これは架空請求ではなく、消滅時効の問題として扱うべき場面です。無視だけでは解決せず、かといって電話するのも危険という、最も判断の難しい類型です。8章で詳しく扱います。

「無視でいいのか、書面を出すべきか」を切り分けます

届いた請求書やSMSの画像を送っていただければ、上の3タイプのどれに当たるか、無視でよいのか、通知書を出すべきなのかを確認いたします。年間約1,000件の内容証明相談の実績があります。ご相談は無料です。

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5. いま多い架空請求の手口

手口は年単位で変わりますが、2026年時点で相談が多いのは次の3類型です。

類型1:SMSでの「未納料金」通知

最も件数が多い類型です。宅配業者の不在通知、通信事業者の利用料未納、動画配信サービスの決済エラーを装い、短縮URLを踏ませます。リンク先は本物そっくりの偽サイトで、そこにIDとパスワード、カード番号を入力させるフィッシングと一体化しているのが特徴です。

見分け方は単純で、SMSに書かれたリンクは開かない。宅配や通信の確認は、公式アプリを自分で開くか、ブックマークから公式サイトに入って行う。これだけで被害はほぼ防げます。

類型2:実在の企業名・公的機関を騙るもの

実在する法人名や、それに似せた名称(1文字だけ違う、「株式会社」の位置が違う等)を使う手口です。裁判所、法務省、消費者庁、警察を名乗るものもあります。

照合の手順は次のとおりです。①請求書の連絡先は使わない ②社名・機関名で検索して公式サイトを開く ③公式サイトに載っている代表電話・所在地と、請求書の記載を突き合わせる。公的機関がSMSやメールで金銭の支払いを求めることは、原則としてありません。

類型3:サブスク・情報商材を装うもの

この類型がいちばん厄介です。実際に登録した可能性が排除できないため、「架空か本物か」の判定が自分ではつきにくい。無料お試しから自動課金に移行する契約、SNS広告経由で申し込んだ教材やツールなどが該当します。

この場合は、無視する前に必ず4章・例外2の確認手順を実行してください。本物の未払いであれば、無視は延滞損害金を増やすだけです。

*手口は毎年変化します。この章の内容は2026年7月時点の相談傾向に基づくものです。最新の手口は、国民生活センターの注意喚起ページで確認できます。

6. 絶対にやってはいけない7つの対応

「やるべきこと」より「やってはいけないこと」を守るほうが、結果に直結します。危険度の高い順に並べました。

やってはいけないこと なぜ危険か
① 記載された電話番号にかける これが最大の失敗。番号が「生きている」と判明した瞬間、名簿としての価値が跳ね上がり、請求が継続・増加します。会話の中で氏名や住所を聞き出される危険も高い
② 「少額だから」と一度払う 支払歴は「この人は払う人」という実績になり、次はより高額な請求が来ます。古い本物の債権であれば、支払い自体が債務の承認となり時効が更新されることもある
③ SMS・メールのリンクを開く フィッシングサイトへの誘導と一体化しており、ID・パスワード・カード情報を抜かれます。開封の事実が送信側に通知される場合もある
④ 氏名・住所・生年月日を伝える 名簿が完成し、他の詐欺グループに転売されます。二次被害(被害回復をうたう詐欺)の入口になる
⑤ 誰にも相談せず振り込む 振込は取り消せません。第三者に一言話すだけで止まる被害が非常に多い。「今日中に」「今すぐ」と急かされたら、それ自体が詐欺のサイン
⑥ 抗議のつもりで返信する 「払わない」「訴えるぞ」という返信も反応の一種です。反応した連絡先という評価は同じ。感情的なやり取りは相手に材料を与えるだけ
⑦ 証拠を削除する 気持ち悪いからと消してしまうと、後で警察や消費生活センターに相談するときに何も出せません。ブロックはしても、削除はしない

特に②は取り返しがつきません

「1万円くらいなら払って終わらせよう」という判断が、最も高くつきます。架空請求なら次の請求を呼び込み、古い本物の債権なら時効の利益を失います。少額であるほど「払って済ませたい」心理が働くことを、相手は計算しています。

7. すでに払ってしまった場合にできること

時間が最大の変数です。回収可能性は時間とともに下がります。読み終える前に、まず金融機関・カード会社へ電話してください。

決済手段別・最初にすべきこと

支払った方法 最初にすること
クレジットカード カード裏面の番号でカード会社に連絡し、不正利用または不当請求として申告する。カードの利用停止・再発行も同時に依頼する。決済が確定する前であれば止まる可能性があります
電子マネー・
プリペイドカード
カード番号を写真や口頭で伝えた直後であれば、発行事業者に連絡することで残高が使われる前に止められる場合があります。分単位の勝負なので、レシートとカードを手元に置いてすぐ電話してください
銀行振込 振込先の金融機関に「詐欺被害に遭った」と伝え、口座の凍結(取引停止)を依頼する。あわせて警察にも届け出る。後述の振り込め詐欺救済法による回復の起点になります
キャリア決済 通信事業者の窓口に連絡し、不正利用の申告を行う。あわせてアカウントのパスワード変更と、決済機能の利用停止を行う
暗号資産 送金後の取り戻しは極めて困難です。取引所に連絡しつつ、送金先アドレスと取引履歴を保存して警察に相談してください

振り込め詐欺救済法による被害回復

銀行振込で払ってしまった場合、振り込め詐欺救済法(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)による回復の余地があります。仕組みは次の流れです。

① 口座の凍結
被害者や警察からの連絡を受け、金融機関が振込先口座の取引を停止します。

② 預金保険機構による公告
対象口座が公告され、名義人が権利を主張しなければ、その預金債権は消滅します。公告期間はおおむね60日間です。

③ 分配金の支払申請
振込先の金融機関に対し、申請書・本人確認書類・振込の事実がわかる資料を提出します。

④ 被害回復分配金の支払
凍結口座に残っていた金額を原資として支払われます。

正直にお伝えすべき限界

この制度で全額が戻るとは限りません。原資は凍結時点の口座残高であり、犯人が既に引き出していれば支払は受けられません。被害者が複数いて申請総額が残高を超える場合は、被害額に応じた按分になります。また、残高が一定額に満たない場合は支払の対象外となります。支払を受けられるまでには、一般に半年以上を要するとされています。
だからこそ、1分でも早く口座凍結を依頼することが結果を左右します。

警察・消費生活センターへの届出

金融機関への連絡と並行して、警察と消費生活センターに相談してください。緊急性がある場合(相手が自宅に来る、ATMに誘導されているなど)は110番、そうでなければ警察相談専用電話「#9110」、契約や決済に関するトラブルは消費者ホットライン「188」が窓口です。

相談の際は、いつ・どこで・何を・いくら支払ったのかを時系列で1枚にまとめ、保存した証拠(SMS、メール、振込明細、スクリーンショット)を持参すると、聞き取りが格段にスムーズになります。

この章では、あえて当事務所へのご案内を置いていません

支払ってしまった直後にすべきことは、金融機関・カード会社・警察への連絡であり、書面の作成ではありません。ここで相談窓口の順番を入れ替えると、回収の可能性を下げてしまいます。まず上記の窓口へ。その後で書面が必要になった段階で、あらためてご相談ください。

*詐欺被害からの金銭回収については、チケット詐欺は泣き寝入りしない!お金を取り戻す全手順も参考になります。相手が特定できている場合の回収手順を、より具体的に解説しています。

8. 「架空請求だと思ったら本物だった」場合|消滅時効という選択肢

当事務所への相談で意外に多いのが、この類型です。「まったく身に覚えのない請求だと思っていたら、10年近く前に自分が契約したものだった」というケース。債権回収会社(サービサー)は、他社から古い債権を買い取って請求するため、契約当時とは違う社名で通知が来ます。だから「知らない会社=架空請求」と誤認しやすいのです。

古い債権には「消滅時効」がある

債権は、一定期間が経過すると時効によって消滅しうるものです。現行民法では、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年という期間が定められています(民法166条1項)。ただし、いつの契約かによって適用される法律が異なり、また裁判上の請求などがあれば期間の進行が止まります。期間の計算は個別性が高く、ご自身での判断は危険です。

時効は「勝手に消える」ものではない

ここが最も誤解されている点です。時効期間が過ぎても、「時効を使います」と相手に意思表示(時効の援用)をしなければ、支払義務は消えません。そして、その意思表示をした証拠を残すために使われるのが内容証明郵便です。

最も多い失敗|電話で「少しなら払います」と言ってしまう

時効が完成している債権でも、債務者が「その借金はあります」と認める行為(債務の承認)をすると、時効の利益を失い、支払義務が復活しうるとされています。具体的には、次の行為が危険です。

・電話で「分割にしてもらえませんか」と言う

・「今月は無理なので来月まで待ってください」と伝える

・とりあえず1,000円だけ振り込む

・相手が送ってきた「和解書」「分割払い誓約書」にサインする

回収業者は、この一言を引き出すために電話をかけてきます。古い請求に心当たりがある場合、折り返し電話は絶対に避けてください。

つまり、この類型の正しい対応は「無視」でも「電話」でもなく、書面で、必要なことだけを、正確に伝えることになります。内容証明郵便が最も力を発揮する場面のひとつです。

古い請求書が届いた方へ|電話をかける前にご相談ください

時効期間の起算点、援用が可能かどうか、通知書に何を書き、何を書いてはいけないか。一度の電話で失われる利益が大きい分野です。届いた書面の画像をお送りいただければ、その場で方向性をご確認いただけます。ご相談は無料です。

LINEで書面を見てもらう
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9. 通知書を出すべき場面・出してはいけない場面

先に大原則を述べます。典型的な架空請求業者に対して、通知書を送る必要はありません。むしろ有害です。通知書には差出人の住所氏名を書きますから、相手に自分の住所を教える結果になります。

出すべき場面 出してはいけない場面

・相手が実在の事業者で、契約の有無や金額を争っている

・すでに支払済みなのに請求が続いている

消滅時効を援用する意思表示を証拠として残したい

・解約済みであることを明確に主張したい

・執拗な連絡で生活・業務に支障が出ており、記録を残したい

・差出人の実在が確認できない(=住所を教えるだけになる)

・SMS・メールしか来ておらず、送付先住所すら不明

・裁判所から特別送達が届いている(通知書ではなく異議申立てが必要)

・怒りをぶつけたいだけで、法的に主張したい内容が定まっていない

つまり通知書は、「相手が実在し、こちらの主張を法的に固定する必要がある場合」に限って有効な道具です。この判断を飛ばして送ってしまう方が少なくないため、当事務所ではまず「そもそも出すべきか」から確認しています。

*相手の住所がわからず送付先が特定できないというご相談も多くいただきます。その場合の調べ方は、内容証明の住所がわからない時の対処法で解説しています。

10. 自分で通知書を作る場合に起きやすい失敗

通知書は自分でも作れます。テンプレートも無料で手に入ります。それでも実務でご相談をいただくのは、内容証明は一度出すと取り消せず、書いた内容が証拠として残り続けるからです。ご自身で作成される場合に、特に多い失敗を挙げます。

失敗1:うっかり債務を認めてしまう表現を書く
「支払う意思はありますが」「一部は身に覚えがあるものの」といった書き出しは、債務の承認と評価されるおそれがあります。時効を主張する場面では致命傷になりかねません。

失敗2:争点を広げすぎる
言いたいことを全部書くと、相手に反論の材料を与えます。通知書は、主張する事実を絞り、それ以外は書かないのが原則です。

失敗3:感情的な表現・脅迫と受け取られる表現を入れる
「訴えてやる」「警察に言う」「ネットに書く」といった記載は、こちらが不利になります。場合によっては脅迫・強要と評価される危険もあります。

失敗4:形式不備で郵便局の窓口で受理されない
内容証明郵便には、1行あたりの文字数・1枚あたりの行数など、様式のルールがあります。窓口で修正を求められ、出し直しになるケースがあります。

失敗5:出す相手・出す時期を間違える
債権が譲渡されている場合、現在の債権者に出さなければ意味がありません。また、時効の主張は「出した時期」が決定的に重要になることがあります。

加えて、実務的な負担も小さくありません。文案作成、様式調整、同文の作成(相手方用・郵便局保管用・差出人用の3通)、内容証明を取り扱う郵便局の確認、窓口での手続。慣れていない方で、半日から1日は見ておく必要があります。平日の日中に郵便局へ行く時間が取れない方も多いでしょう。

項目 金額の目安
郵便料金(定形25g以内) 110円
内容証明の加算料金(1枚) 480円(2枚目以降は1枚につき+290円)
一般書留の加算料金 480円
配達証明の加算料金(差出時) 350円
合計(1枚・配達証明あり) おおよそ1,420円

*料金は2026年7月時点の目安です。改定される場合がありますので、差出前に日本郵便の公式情報でご確認ください。配達証明は、相手がいつ受け取ったかを証明するもので、実務上は付けるのが標準です。

11. 行政書士に作成を依頼するメリット

「テンプレートがあるのに、なぜ専門家に頼むのか」。この問いに、実務の側から正面からお答えします。

メリット1:そもそも「出すべきか」から判断できる

最大の価値はここにあります。9章で述べたとおり、架空請求の多くは通知書を出すべきではありません。依頼して初めて「出さないほうがいい」と分かるケースが実際にあります。当事務所では、その場合は作成をお勧めせず、適切な窓口をご案内しています。

メリット2:不利になる一文を書かずに済む

10章の失敗1〜3は、いずれも「法的にどう評価されるか」を知らなければ避けられません。特に時効に関わる場面では、たった一文で結果が変わります。書かないほうがよいことを書かない。これは知識がないと実行できない技術です。

メリット3:相手の受け取り方が変わる

同じ主張でも、法的根拠が示され、様式が整い、専門家の関与がうかがえる書面は、受け取る側の対応が変わります。実在の事業者が相手であれば、社内で法務担当に上がり、事務的に処理される可能性が高まります。相手に「この人は準備をしている」と伝わること自体が機能します。

メリット4:時間と手間を丸ごと省ける

文案作成から様式調整まで対応いたします。ご本人にお願いするのは、事実関係のご説明と、完成した文面のご確認、そして差出しのみです。平日に半日を空ける必要がなくなります。

メリット5:次の一手が見えている状態で出せる

通知書は出して終わりではありません。相手が反論してきた場合、無視した場合、逆に訴えてきた場合。それぞれの想定と、次に誰に相談すべきかまで整理したうえで出せることが、単なる書面作成との差になります。

できること・できないことの線引き

行政書士がお手伝いできること
ご本人名義の通知書・回答書の作成支援、事実関係の整理、相談窓口のご案内。

行政書士が行えないこと
相手方との交渉・折衝の代理、示談や和解のあっせん、裁判手続の代理。これらは弁護士(一部は認定司法書士)の業務です。紛争性が高い案件や、相手に弁護士が就いている場合は、当初から弁護士へのご相談をお勧めしています。この線引きは、ご依頼をお受けする前に必ずご説明します。

通知書の作成をお考えの方へ

債務不存在の通知、消滅時効の援用、連絡停止の申入れ。契約書・通知書などの法的書面作成を専門とする行政書士が、ご本人名義の書面作成をお手伝いします。年間約1,000件の内容証明相談の実績があります。
まずは届いた書面の画像とご事情をお送りください。出すべきでないと判断した場合は、その旨を率直にお伝えします。ご相談は無料です。

作成費用の目安:【料金レンジ:要確定】

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12. 文例1|債務が存在しないことを通知する

相手が実在の事業者で、契約した覚えがない場合、または解約済みの場合の文例です。【 】が書き換え箇所です。

通 知 書

【令和●年●月●日】

【株式会社●●】

代表者 【●●●●】殿

住所 【●●県●●市●●町●丁目●番●号】
氏名 【●● ●●】  印

冠省 貴社より、当職宛に【令和●年●月●日付】の請求書が送付され、金【●●●,●●●】円の支払を求められております。

しかしながら、当職は貴社との間で、当該請求の根拠とされる【●●サービス】に関する契約を締結した事実はありません。【また、仮に何らかの申込みがあったとしても、当職は【令和●年●月●日】に解約の手続を完了しております。】

したがって、当職は貴社に対し、上記請求に係る債務を一切負担しておりません。ここに、当該債務が存在しないことを通知いたします。

つきましては、本書面到達後【7】日以内に、貴社が主張される契約の成立を示す資料(申込みの記録、契約書面、利用履歴等)をご開示ください。ご開示なき場合には、請求の根拠がないものとして取り扱わせていただきます。

なお、今後の連絡は、本書面記載の住所宛の書面によりお願いいたします。  草々

この文例のポイント

① 否認する対象を特定している - 「請求全部を否認する」ではなく、日付と金額で対象を確定させています。後日の争点を狭くするためです。

② 資料の開示を求めている - 立証の負担は請求する側にあります。開示を求めることで、根拠のない請求であればそこで終わる可能性が高まります。

③ 支払意思を一切示していない - 「話し合いには応じます」等の一文を入れないことが重要です。譲歩の余地があると読まれる表現は入れません。

13. 文例2|消滅時効を援用する

数年前の債権について請求を受け、時効期間が経過していると考えられる場合の文例です。時効の成否は個別判断が必要ですので、この文例をそのまま使う前に、必ず期間と経緯をご確認ください。

通 知 書(消滅時効援用)

【令和●年●月●日】

【●●債権回収株式会社】

代表者 【●●●●】殿

住所 【●●県●●市●●町●丁目●番●号】
氏名 【●● ●●】  印

冠省 貴社より、【令和●年●月●日付】書面をもって、【原債権者:株式会社●●】に対する【●●●,●●●】円の債務について支払を求められております。

当該債権は、【平成●年●月●日】を最終の弁済期【または最終取引日】とするものであり、既に法律上の消滅時効期間が経過しております。

よって、当職は貴社に対し、本書面をもって当該債権につき消滅時効を援用する旨の意思表示をいたします。

つきましては、本件について今後の請求および連絡を停止していただきますようお願いいたします。また、本件債権に関し信用情報機関への登録がある場合には、その抹消の手続をお取りください。

なお、本書面は債務の存在を承認する趣旨を含むものではありません。  草々

この文例のポイント

① 末尾の一文が重要 - 「債務の存在を承認する趣旨を含むものではない」と明記しています。時効援用の書面が、逆に承認と読まれる事態を避けるためです。

② 起算点を書いている - いつを基準に時効期間を計算したのかを示します。ここが曖昧だと、相手に「まだ完成していない」と反論されます。

③ 配達証明を必ず付ける - 援用の意思表示が相手に到達したことの証明が必要です。到達日が記録に残る形で出してください。

*時効援用は、判断を誤ると不利益が大きい手続です。裁判上の請求を受けたことがある、途中で一部を支払った、契約時期が民法改正の前後にまたがるといった事情があると、期間の計算が変わります。ご自身での判断が難しい場合は、必ず専門家にご確認ください。

14. 文例3|今後の連絡停止を求める

請求が執拗に繰り返され、生活や業務に支障が出ている場合の文例です。

通 知 書

【令和●年●月●日】

【株式会社●●】御中

住所 【●●県●●市●●町●丁目●番●号】
氏名 【●● ●●】  印

冠省 貴社からは、【令和●年●月●日】以降、【電話・SMS】により【1日あたり●回程度】にわたり、支払の要求を受けております。当職は、既に【令和●年●月●日付】書面により債務を負担していない旨を通知しております。

度重なる連絡により、【就業時間中の業務に支障が生じており/平穏な生活が害されており】ます。

つきましては、本書面をもって、本件に関する電話および訪問による連絡を停止し、必要な連絡は本書面記載の住所宛の書面によることを求めます。

本書面到達後もなお同様の行為が継続する場合には、【関係機関への相談を含め】必要な対応を検討いたします。  草々

この文例のポイントと限界

① 事実を数値で示す - 「しつこい」ではなく「1日●回」「●月●日から」と書くことで、記録としての価値が生まれます。

② 連絡手段を書面に限定する - 完全な停止を求めるより、書面に一本化するほうが相手も応じやすく、こちらにも記録が残ります。

③ 法的な強制力はない - 通知書で連絡を止めることを強制はできません。ただし、それでも連絡が続いた場合に、「警告後も継続した」という事実を証拠として残せる点に意味があります。

*執拗な連絡や嫌がらせへの対応については、嫌がらせ・近隣トラブル・つきまといに警告する方法ハラスメント・誹謗中傷は内容証明郵便で解決もあわせてご覧ください。

文例を、ご自身の事情に合わせて書き換えます

上の文例は一般的なひな形です。実際には、契約の経緯・支払の有無・相手の属性によって、書くべき内容も、書いてはいけない一文も変わります。事情をお聞きしたうえで、ご本人名義の書面を作成いたします。

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15. 相談・通報先の一覧

窓口 こんなときに
110番 相手が自宅に来ている、ATMに誘導されている、身の危険があるなど緊急時
警察相談専用電話
#9110
緊急ではないが警察に相談したいとき。発信地を管轄する警察本部の相談窓口につながります。受付時間は都道府県により異なります
消費者ホットライン
188
契約・通販・サブスクなどの消費者トラブル。最寄りの消費生活センターにつながり、相談員が助言をしてくれます。相談自体は無料です
振込先の金融機関 銀行振込で払ってしまったとき。口座凍結の依頼は早いほど有利です
カード会社・
決済事業者
カード裏面や公式サイトに記載の窓口へ。検索結果の広告に出てくる番号ではなく、必ずカード本体や公式アプリから確認してください
弁護士・認定司法書士 裁判所から特別送達が届いた、訴訟・支払督促への対応が必要なとき。期限が短いため最優先です
国民生活センター 最新の手口や注意喚起を確認したいとき。公式サイトで随時公表されています

*電話番号・受付時間・制度内容は変更されることがあります。ご利用の際は、各機関の公式サイトで最新の情報をご確認ください。また、「あなたの被害金を取り戻します」と連絡してくる業者には応じないでください。被害回復をうたう二次被害の詐欺が確認されています。

16. よくある質問

Q. 無視し続けたら、本当に裁判を起こされませんか。

典型的な架空請求業者が裁判を起こすことは、通常ありません。申立てをすれば自らの身元が裁判所に残るためです。ただし「絶対にない」とは言えません。支払督促の制度を悪用した事例も報告されています。だからこそ、裁判所からの特別送達だけは開封して内容を確認することが必要です。中身を見ずに捨てるのが、いちばん危険です。

Q. 家族が支払ってしまいました。本人でなくても手続はできますか。

金融機関やカード会社への連絡は、まずご本人から行うのが原則です。ただし高齢のご家族などで難しい場合は、事情を説明したうえで対応方法を確認してください。振り込め詐欺救済法の支払申請は、代理人による申請が認められる場合があります。手続の詳細は、振込先の金融機関にご確認ください。まずは時系列と証拠の整理をご家族が手伝うだけでも、進み方が大きく変わります。

Q. 同じ業者から何度も請求が来ます。止める方法はありますか。

相手が特定できない場合は、着信拒否・迷惑メール設定・SMSのフィルタ設定で機械的に遮断するのが最も現実的です。相手が実在の事業者で、かつ連絡が執拗な場合は、14章の連絡停止の通知が選択肢になります。ただし、実在が確認できない相手に通知を送るのは、住所を教えるだけになるため避けてください。

Q. 一度だけ折り返し電話をしてしまいました。どうなりますか。

その時点では債務は発生しません。ただし、番号が有効であることを相手に知らせた状態です。今後は着信を拒否し、二度と反応しないことに徹してください。会話の中で氏名・住所を伝えてしまった場合は、#9110と188に相談し、記録を残しておくことをお勧めします。

Q. 内容証明を出せば、相手は必ず請求をやめますか。

やめるとは限りません。内容証明郵便の機能は、「いつ・誰が・どのような内容の書面を送ったか」を郵便局が証明することにあります。相手を強制的に従わせる効力はありません。それでも実務上、実在の事業者に対しては対応が変わることが多く、また万一の紛争時に自分の主張を裏づける証拠になります。この点を正しく理解したうえでご利用ください。

17. まとめ

① 大半の架空請求は、無視・保存・無反応で足りる。差出人が特定できず、債権の中身も書かれておらず、SMS・メールのみであれば、連絡しないのが正解です。

② 無視してはいけない例外は4つ。裁判所からの特別送達、実際に利用した可能性、個人情報を渡した後、そして古い本物の債権。この4つは対応が必要です。

③ 折り返し電話と「少額だけ支払う」が、最も高くつく。特に古い債権では、一言が時効の利益を失わせることがあります。

④ 払ってしまったら、読み終える前に電話する。金融機関・カード会社・決済事業者への連絡が最優先。回収可能性は時間とともに下がります。

⑤ 通知書は、出すべき場面を選んで使う道具。実在の相手に対して、主張を証拠として固定するときに力を発揮します。出すべきでない場面で出すと、かえって不利になります。

架空請求は「何もしないことが正解」である場面が多い、めずらしい類型のトラブルです。だからこそ、何もしなくてよいのか、それとも動かなければならないのかの見極めが、すべてを決めます。判断に迷ったまま時間だけが過ぎている状態が、いちばん損をします。

「これは無視していいのか」を、一緒に確認します

届いた請求書やSMSの画像を送っていただくだけで構いません。3タイプのどれに当たるか、無視でよいのか、通知書を出すべきなのか、他の窓口に行くべきなのかをご確認いただけます。
契約書・通知書などの法的書面作成を専門とする行政書士が対応します。内容証明郵便については、年間新規相談約1,000件の実績があります。ご相談は無料です。

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執筆者

行政書士(登録番号:第22080418号)
契約書・通知書などの法的書面作成を専門とする行政書士。内容証明郵便は、年間新規相談約1,000件の実績。

*本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。記載の法令・制度・料金は2026年7月時点の情報です。当事務所が対応するのは、ご本人名義の通知書・回答書の作成支援までであり、相手方との交渉・折衝の代理、示談や和解のあっせん、裁判手続の代理は行いません(弁護士法72条)。支払督促・訴訟への対応が必要な場合は、弁護士または認定司法書士にご相談ください。書面の送付により、相手方の対応や被害の回復を保証するものではありません。

最終更新日:2026年7月26日

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