【2026年夏更新】身に覚えのない請求書は無視していい?|無視できるケースと、絶対に無視してはいけない3つのサインの見分け方

更新日:2026年7月25日 / 執筆:行政書士(登録番号:第22080418号)

この記事の結論を先にお伝えします

身に覚えのない請求書やハガキ、SMSの多くは、連絡を取らずに放置して差し支えないものです。しかし、そのなかに絶対に無視してはいけないものが少数だけ混ざっています。この記事は、その「少数」を見分けるための判断基準だけに絞って構成しました。

ポストに入っていた「未納料金のお知らせ」。スマートフォンに届いた「本日中にご連絡がない場合は法的手続に移行します」というSMS。心当たりはまったくないのに、「もし本当に裁判になったらどうしよう」という不安だけが残る——多くの方が、この状態でこのページにたどり着きます。

不安の正体は、請求そのものではありません。「無視した後に何が起きるのか分からない」という一点です。だからこそ必要なのは、業者の手口を延々と読むことではなく、手元の書面がどちらに分類されるのかを、今日中に確定させることです。

この記事を読み終えると、次の4つが分かります。

  • 手元の請求書が「無視してよい側」か「対応が必要な側」かを分ける、たった2つの判断軸
  • 無視すると取り返しがつかなくなる、3つの危険なサイン
  • 裁判所からの書類(支払督促・訴状)と、それを装った偽物の見分け方
  • 債務が存在しないことを相手に通知する文書の書き方と、そのまま使える文例2本

まずは30秒|あなたの請求書はどこに分類されるか

判断フロー

Q1.封筒に「特別送達」と書かれている/差出人が裁判所になっている

はい → 絶対に無視してはいけません。期限内の対応が必要です。「支払督促と訴状の見分け方」へ

▼ いいえ

Q2.請求内容に、契約した可能性が少しでもある(解約したはずの定期購入、家族名義の契約など)

はい → 無視は危険です。事実確認をしたうえで、必要なら書面で意思表示を。「無視すると危険なケース」へ

▼ いいえ

Q3.差出人の会社名・住所を検索しても実在が確認できない/連絡先が携帯電話番号やSMSだけ

はい → 原則として、連絡せず放置で差し支えないケースです。書面は捨てずに保管を。「無視してよいケース」へ

*このフローは一般的な整理であり、個別の事案について結果を保証するものではありません。判断に迷う場合は、書面を手元に置いたままご相談ください。

結論|分かれ目は「裁判所を経由しているか」と「契約の事実がありうるか」の2つだけ

身に覚えのない請求への対応は、業者の名前や請求金額で決まるものではありません。判断を左右するのは、次の2つの軸だけです。

軸1:裁判所を経由しているか
裁判所から送られた書類は、放置すると相手の言い分どおりの結論が確定してしまう可能性があります。民間業者からの請求書には、この効力はありません。

軸2:契約の事実が存在しうるか
「まったく契約していない」のか、「契約したかもしれないが支払義務はないはずだ」のかで、取るべき手段が変わります。前者は存在しない債務、後者は消滅した債務の問題です。

この2軸を組み合わせると、あらゆる請求は次の4つのどれかに収まります。

契約の事実は考えられない 契約の事実がありうる
裁判所を
経由していない
A:原則、放置で足りる
いわゆる架空請求の典型。連絡すること自体がリスクになります。書面は保管。
B:確認と意思表示が必要
解約漏れ・時効完成済みの債権など。何もしないと事態が悪化することがあります。
裁判所を
経由している
C:期限内の異議申立てが必要
身に覚えがなくても、放置すれば確定します。すぐ専門家へ。
D:最優先で弁護士に相談
争点が実体的に存在する状態。自己判断での対応は避けてください。

この記事でいちばん重要な一文

Aは無視してよく、B・C・Dは無視してはいけません。そしてA以外に該当する可能性が1%でもあるなら、まずAではないことを確認する作業から始めてください。「たぶん架空請求だろう」という推測で放置したケースが、後から最も重い結果につながります。

以降のセクションは、この4象限のどこに自分がいるのかを確定させるための手順です。順に読み進めれば、最後には「今日やること」が1つに絞られます。

最初に確認する4項目|差出人・債権の内容・金額・支払期限

分類を確定させる作業は、手元の書面を4つの観点から読むだけで大半が終わります。電話をかける必要も、メールを返信する必要もありません。

1.差出人|その法人は実在するか

書面に記載された会社名・所在地・電話番号を、書面に書かれた連絡先ではなく自分で検索して確認します。確認したいのは次の点です。

  • 法人名で検索して、実在の企業サイトや国税庁の法人番号公表サイトにヒットするか
  • 記載された住所が、実在の建物か。地図で見るとバーチャルオフィスや空き地ではないか
  • 連絡先が携帯電話番号のみ、あるいはSMS・メールアドレスのみになっていないか
  • 実在する大手企業や法律事務所の名称を、わずかに変えて使っていないか(1文字違い、旧社名の流用など)

債権回収を業として行うには、法務大臣の許可を受けた債権回収会社(サービサー)であるか、債権者本人であるか、代理権のある弁護士等であることが前提になります。法務省が公表する債権管理回収業の許可業者一覧に名前がない「◯◯債権回収センター」といった名称は、それだけで警戒に値します。

2.債権の内容|何の代金なのかが特定されているか

正規の請求には、いつ・どのような契約に基づく・何の代金なのかが必ず書かれています。逆に、次のような表現しかないものは、債権として特定されていません。

特定されていない表現の例 正規の請求に通常あるもの
「未納料金」「情報料」「有料コンテンツ利用料」だけの記載 サービス名・契約日・契約番号・利用期間の記載
「総合消費料金」「電子消費者契約」など、法律用語らしく見えるが実在しない名称 請求の根拠となる契約書・利用規約の条項
「本件は民事訴訟として提起されました」等、手続の詳細(事件番号・裁判所名)を伴わない記載 支払先口座が法人名義であること、問い合わせ窓口が固定電話であること

3.金額|不自然な設計になっていないか

金額そのものに違法・適法の別はありませんが、実務上、次のような特徴には注意が向きます。

  • 端数がまったくない(99,800円、150,000円など)。実際の利用料金に基づく請求は、日割りや消費税の関係で端数が出ることが一般的です。
  • 「本日中なら◯円に減額」といった値引き提示がある。正当な債権の額が、支払日によって変動することは通常ありません。
  • 払える範囲に絞った金額設定。数万円程度に設定されているのは、「争うより払ったほうが早い」と思わせる意図が疑われます。

4.支払期限|考える時間を与えない設計になっていないか

「本日中」「24時間以内」「◯月◯日17時まで」といった極端に短い期限は、調べる時間・相談する時間を奪うための設計であることが少なくありません。正規の債権者であれば、通常は相応の期間を設けたうえ、支払がなければ改めて督促を重ねます。1通目でいきなり「本日中に法的手続」と書かれている時点で、内容を疑って読むのが妥当です。

4項目チェックの使い方

4項目のうち2つ以上に不自然さがある場合、前章のA(原則放置)に該当する可能性が高くなります。逆に、4項目すべてが具体的に特定されている請求は、身に覚えがなくてもB以降として扱い、事実関係の確認から入ってください。

自分の請求書がA〜Dのどれか、判断がつきませんか

書面の写真1枚をお送りいただければ、どの分類に当たるか、次に何をすべきかをお伝えします。
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無視してよいケース|連絡しないことが最善の対応になる3類型

次の3つに当てはまる請求は、原則として反応しないことが最も安全な対応です。ここで重要なのは「無視した場合に何が起きるか」ではなく、何が起きないかを理解することです。

ケース1|発信元が不明、または連絡先が携帯番号・SMSのみ

折り返しの連絡をすること自体が、相手に情報を渡す行為になります。相手が本当に知りたいのは請求額の回収ではなく、「この電話番号の持ち主は、請求に反応する人物である」という事実であることが少なくありません。一度反応すると、名簿上の評価が変わり、別の名目での接触が繰り返されるおそれがあります。

無視しても起きないこと

  • 連絡しなかったことを理由に、いきなり財産が差し押さえられることはありません。差押えには、確定判決や仮執行宣言付支払督促などの債務名義が必要です。
  • 請求書を放置したこと自体が、支払義務を認めたことになるわけではありません。
  • 信用情報(いわゆるブラックリスト)に、架空の請求が登録されることはありません。

ケース2|契約の事実がまったくない

そもそも契約が成立していなければ、支払うべき債務は発生しません。相手が「どの契約に基づく請求か」を特定できていない請求は、法的には主張として成り立っていない状態です。

注意したいのは、相手を特定しないまま大量に送られる請求です。名簿に載った住所へ一斉に送付し、反応した人だけを相手にする方法が知られています。「自分だけが狙われている」と感じたときほど、まず同じ文面が他にも出回っていないかを検索してみてください。文面がそのまま出てくることは珍しくありません。

ケース3|SMS・メールだけで、書面が届いていない

正規の債権者が、最終的な請求手続をSMSのみで完結させることは通常ありません。訴訟や支払督促といった手続に進む場合、必ず郵便による書面が介在します。SMSに記載されたリンクを開いたり、そこに個人情報を入力したりしないでください。

「無視してよい」の意味を正確に

無視してよいのは「連絡を取らない」という意味であって、「書面を捨てる」という意味ではありません。届いた書面・SMSの画面・封筒は、すべて保管してください。後日、同じ相手から別の請求が来たときや、警察・消費生活センターに相談するときに、経緯を示す資料になります。

*関連記事:チケット詐欺は泣き寝入りしない!お金を取り戻す全手順(すでに送金してしまった場合の回収手順はこちら)

無視すると危険なケース|1つでも当てはまれば放置してはいけません

ここが本記事で最も重要なセクションです。次の3つのうちどれか1つでも当てはまるなら、放置という選択肢はありません

危険1|裁判所からの特別送達(支払督促・訴状)

これだけは、絶対に無視しないでください

裁判所を経由した手続は、こちらが何も言わなければ相手の主張がそのまま通ったものとして扱われ得ます。身に覚えがないことは、黙っていても伝わりません。異議を述べる、答弁書を出すという行動によって初めて、争う意思が手続上あらわれます。放置した結果、給与や預金の差押えにつながる可能性もあります。

受け取ったときに驚いて封を開けられない方もいますが、受け取っていないことにはできません。特別送達は送達の記録が残るため、開封しないまま置いておくことは、期限だけが進む最悪の対応になります。

危険2|過去に契約した心当たりがあるサービス

「身に覚えがない」と感じていても、次のような形で契約が残っていることがあります。

  • 解約したつもりの定期購入。初回だけ安価な商品で、所定の回数や手続を経なければ解約が完了しない設計になっていた。
  • アプリ・サブスクの退会漏れ。アプリを削除しただけでは契約が終了していない。
  • 数年前の携帯電話・通信回線の未精算分。転居時の解約手続が完了しておらず、基本料金が積み上がっていた。
  • 債権が第三者に譲渡された。契約した会社と、請求してきた会社の名前が違うため「知らない会社」に見える。

この類型は、放置すると本当に訴訟や支払督促に発展し得ます。もっとも、内容によってはすでに時効期間が経過している可能性もあり、その場合は後述の時効の援用という手段が検討できます。いずれにしても、まず事実を確認することが出発点です。

危険3|家族・同居人が契約した可能性がある

自分に記憶がなくても、同じ住所に住む家族が契約している場合があります。特に次の2つは相談として多い類型です。

状況 確認したいこと
未成年の子が、ゲーム内課金やアプリの有料サービスを利用していた 未成年者の契約は、法定代理人の同意がない場合に取り消せる余地があります(民法5条)。ただし年齢や取引の態様によって結論が変わるため、個別の確認が必要です。
高齢の親が、訪問販売や電話勧誘で契約していた 取引の類型によってはクーリング・オフや取消しの主張が可能な場合があります。契約書面の交付日が起点になることが多いため、書面の保管が重要です。

判定:危険1〜3のうち1つでも該当すれば、無視してはいけません。該当しない場合に限り、前章の「無視してよいケース」として扱ってください。判断に迷う段階では、まだ何もしない(電話をかけない・支払わない)まま、相談してください。

「危険なケース」に当てはまるかもしれない方へ

解約漏れ・家族名義・古い債権は、対応の順番を間違えると不利になることがあります。
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支払督促と訴状を見分ける方法|本物・偽物のチェックポイント

裁判所からの書類かどうかは、封筒の段階で判断できます。次の3点を順に見てください。

封筒・差出人・同封書類で見る

確認箇所 裁判所からの書類に見られる特徴
封筒 「特別送達」と印字されている。郵便受けに投函されず、郵便局員から手渡しで交付され、受領の記録が残る。
差出人 「◯◯簡易裁判所」「◯◯地方裁判所」と裁判所名が記載されている。会社名や個人名のみのものは裁判所からの書類ではない。
同封書類 支払督促なら督促異議申立書の用紙、訴訟なら答弁書の用紙と第1回口頭弁論期日の呼出状が同封されているのが通常。
事件番号 「令和◯年(ロ)第◯◯号」のような事件番号が付されている。番号のない「訴訟予告通知」等は裁判所の手続ではない。

期限がある手続です

支払督促は、受け取ってから一定期間内に督促異議を申し立てることで、通常の訴訟手続に移行させることができます。この期間を過ぎると、相手方の申立てにより仮執行宣言が付され、強制執行の根拠となり得ます。訴状の場合も、指定された期日までに答弁書を提出せず期日にも出席しないと、相手の主張を認めたものとして扱われることがあります。期限は書面に記載されています。まずそこを確認してください。

裁判所を装った偽の書面もあります

「裁判所」「地方裁判所管理局」といった名称を使った偽の書面も確認されています。見分ける最も確実な方法は、書面に書かれた電話番号にかけないことです。

  1. 書面に記載された裁判所名と事件番号を控える。
  2. 裁判所ウェブサイトで、その裁判所の代表電話番号を自分で調べる。
  3. 自分で調べた番号にかけ、事件番号を伝えて、その事件が実在するかを確認する。

本物であれば、事件の存在を確認できます。存在しなければ、それは裁判所を騙った文書ということになります。

このセクションについての、当事務所からの正直なご案内

支払督促への異議申立てや訴訟対応は、行政書士の業務範囲外です。裁判所を経由した手続に入った段階では、弁護士(訴額によっては認定司法書士)にご相談ください。法テラスや各地の弁護士会の法律相談窓口が入口になります。当事務所でお受けできるのは、裁判手続に至る前の段階で、ご本人名義の通知書・回答書を作成するご支援までです。この線引きは、ご相談の最初にお伝えしています。

債務不存在を通知する文書の構成|書くべき4要素

「無視するのではなく、はっきり否定しておきたい」「今後の連絡を止めたい」という場合には、書面で意思表示をすることになります。効果を持たせるために必要なのは、次の4要素です。

要素 書き方
①相手の特定 通知書の宛先。書面に記載された商号・所在地をそのまま用います。
②債権の特定 いつ届いた、どの書面に記載された、いくらの請求についての通知なのかを明示します。ここが曖昧だと、何を否定したのかが残りません。
③否定の理由 契約した事実がない/すでに支払済みである/時効が完成している、のいずれかを選び、理由を1つに絞って書きます。
④求める対応 今後の請求・連絡を行わないよう求める文言。必要に応じて、回答期限を設けます。

主張の類型ごとに、書き方が変わります

  • 契約した事実がない場合:「そのような契約を締結した事実はない」と端的に述べます。存在しないことの説明を長々と書く必要はありません。
  • すでに支払済みの場合:支払日・支払方法・金額を特定して記載します。振込明細等の控えは手元に保管し、原本は送りません。
  • 時効が完成している場合:後述のとおり、援用するという意思表示が必要です。「もう古い債権なので払わない」という書き方では足りません。

感情的な表現を入れてはいけない実務上の理由

通知書は、後に手続の場で証拠として提出される可能性のある書面です。相手を非難する記述や、感情的な言い回しは、主張の内容を弱めるだけでなく、こちらの発言として記録に残ります。書くべきは事実と法的主張のみ、と考えてください。加えて、うっかり「分割でなら払える」といった記載をすると、債務の存在を認めた(承認した)と評価されるおそれがあります。

通知書の文面を、ご本人名義で作成します

どの理由で否定するのか、どこまで書くべきか——この判断が結果を左右します。
お手元の請求書の内容に合わせて、そのまま差し出せる形の文案をご用意します。

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文例1|契約の事実がない請求に対する債務不存在の通知

送る前に、必ずお読みください

相手が架空請求業者であると考えられる場合、通知を送ること自体が推奨されないことがあります。内容証明郵便には差出人の住所・氏名を記載する必要があるため、これまで相手が把握していなかった情報を、こちらから渡す結果になり得るからです。原則は無視、通知は例外——この順序は崩さないでください。それでも通知を検討するのは、相手が実在の法人であることが確認できている場合や、すでに住所を知られており請求が繰り返されている場合などに限られます。

通 知 書

【令和◯年◯月◯日】

【株式会社◯◯◯◯】

代表者 御中

住所 【◯◯県◯◯市◯◯町◯丁目◯番◯号】

氏名 【◯◯ ◯◯】

冠省 貴社は、【令和◯年◯月◯日】付「【請求書】」と題する書面をもって、通知人に対し、【未納料金】名目で金【◯◯◯,◯◯◯】円の支払を請求されました。

しかしながら、通知人は貴社との間で、当該請求の根拠となる契約を締結した事実は一切ありません。したがって、通知人は貴社に対し、当該請求に係る債務を負っておらず、支払に応じる意思がないことをここに通知いたします。

つきましては、本書面到達後、通知人およびその家族に対する一切の請求、電話・郵便・電子メール等による連絡を行わないよう求めます。

なお、本書面到達後もなお請求が継続される場合には、警察および消費生活センターへの相談を含め、必要な対応を検討いたします。

草々

*【 】の部分が書き換え箇所です。金額や日付は、届いた書面の記載をそのまま転記してください。
*「支払う意思がない」ではなく「債務を負っていない」と書くことが要点です。前者は支払能力の話、後者は義務の存否の話であり、意味が異なります。

文例2|契約はあったが債務が消滅している場合(時効の援用)

数年前の携帯料金、クレジットカードの残債、消費者金融からの借入れなど、契約した記憶はあるが、長期間請求がなかった債権について、突然請求書が届くことがあります。この場合に検討するのが「時効の援用」です。

放置しているだけでは、時効の効果は生じません

時効期間が経過していても、「時効を援用する」という意思表示をしなければ、その利益を受けることはできないとされています(民法145条)。つまり、黙って放置し続けることと、援用の通知を出すことは、法的にまったく別の行為です。

項目 概要
現行法の消滅時効期間 債権者が権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年(民法166条1項)。
2020年3月31日以前の債権 改正前の民法・商法が適用され、債権の種類ごとに期間が異なります。契約時期によって結論が変わるため、確認が必要です。
起算点 最後の返済日や支払期日など、事案によって異なります。取引履歴の確認が前提になります。
更新(旧・中断)事由 裁判上の請求のほか、債務の承認によって時効が更新されます(民法152条)。一部でも支払う、支払を猶予してほしいと申し入れる、といった行為が承認と評価されることがあります。

相手が信販会社・債権回収会社の場合はとくに注意

回収の場面では、「まず1,000円だけでも」「今月分だけ入れてもらえれば」といった提案がなされることがあります。これに応じると債務の承認として時効が更新され、援用できなくなる可能性があります。電話で話すこと自体が不利に働き得るため、時効の可能性がある債権については、電話で回答せず、書面で対応するのが実務上の基本です。

通 知 書(時効援用)

【令和◯年◯月◯日】

【◯◯債権回収株式会社】

代表者 御中

住所 【◯◯県◯◯市◯◯町◯丁目◯番◯号】

氏名 【◯◯ ◯◯】

冠省 貴社は、【令和◯年◯月◯日】付書面をもって、通知人に対し、【原債権者:株式会社◯◯/契約番号◯◯◯◯】に係る債権として金【◯◯◯,◯◯◯】円の支払を請求されました。

しかしながら、当該債権については、最終の弁済期日である【平成◯年◯月◯日】から既に法定の消滅時効期間が経過しているものと考えられます。

つきましては、通知人は、貴社に対し、当該債権につき消滅時効を援用する旨の意思表示をいたします。

よって、通知人は当該債務を負っておらず、支払には応じられません。本書面到達後は、当該債権に関する請求および連絡を行わないよう求めます。

草々

*起算点や更新事由の有無は、契約時期・最終返済日・その後のやり取りによって判断が分かれます。援用できるかどうかの見込みを確認してから送付することをおすすめします。誤って援用できない状態で通知すると、相手に所在を知らせるだけの結果になり得ます。

内容証明郵便の出し方と、送る前の注意点

作成した通知書は、内容証明郵便で差し出すことで、いつ・誰が・誰に・どのような内容の文書を送ったかを郵便局が証明する形になります。配達証明を併用すれば、到達した日付も記録に残ります。

項目 内容
字数・行数 窓口差出の場合、1枚あたりの文字数・行数に決まりがあります(縦書きなら1行20字以内・1枚26行以内など)。超過すると窓口で受け付けられません。
必要な部数 同じ内容の文書を3部(相手方用・郵便局保管用・差出人控え)用意します。
取扱局 すべての郵便局で取り扱っているわけではありません。事前に確認してから出向く必要があります。
費用の目安 文書1枚・配達証明付きで、郵便料金110円+一般書留480円+内容証明480円+配達証明350円=1,420円程度が目安です(2026年7月時点。枚数が増えると内容証明の加算料金が加わります)。
e内容証明 Webから24時間差し出せる方式です。1枚あたりの文字数上限が窓口より大きく、枚数が多い場合に選ばれます。利用者登録とWordでの作成が前提となります。

差出人の住所を書く、という意味

内容証明郵便は、差出人の住所・氏名を記載しなければ差し出せません。つまり「私はここに住んでいます」と相手に伝える行為でもあります。相手の素性が確認できていない段階では、この一点だけでも送付を見送る理由になります。送るか送らないかの判断は、文面を整えることより重要です。

*関連記事:内容証明の住所がわからない時の対処法ハラスメント・誹謗中傷は内容証明郵便で解決

自分で作る場合のリスクと、専門家に作成を依頼するメリット

通知書は、形式さえ整えれば誰でも作成できます。それでも実務で専門家に依頼が集まるのは、文面の巧拙ではなく、判断の部分に難しさがあるからです。

ご自身で作成される場合に起きやすいこと

起きやすいこと その結果
そもそも送るべきでない相手に送ってしまう これまで知られていなかった住所・氏名を、こちらから開示する結果になります。
主張の理由を複数並べてしまう 「契約していない」と「時効だ」を同時に書くと、契約の存在を前提としているようにも読め、主張が弱くなります。
承認と評価されうる表現が混ざる 時効が更新され、援用できなくなるおそれがあります。とくに影響の大きい失敗です。
感情的な表現が入る 後の手続で証拠として提出され、こちらの信用度に影響し得ます。
字数・行数の制限に適合していない 郵便局の窓口で受け付けられず、作り直しと再訪問が必要になります。
請求内容の特定が不十分 何について否定したのかが書面から読み取れず、記録としての価値が下がります。

加えて、見落とされがちなのが時間と心理的な負担です。書式を調べ、文面を練り、3部印刷し、取扱局を調べて出向く。この一連の作業を、請求書が届いて不安な状態のまま進めることになります。「文面が本当にこれでいいのか」という迷いを抱えたまま数日を過ごすこと自体が、大きな負担になります。

行政書士に作成を依頼するメリット

  1. 「送るべきか否か」から判断できる
    文面の作成より前に、そもそも通知を出す場面かどうかを整理します。送らないという結論をお伝えすることもあります。
  2. 主張の類型を1つに絞れる
    契約不存在・弁済済み・時効完成のどれで構成するのが妥当か、手元の資料をもとに選び分けます。
  3. 不利になる表現を除去できる
    承認と読まれうる記載、感情的な記載、余計な事実の記載を落とし、必要な要素だけを残します。
  4. 形式面で差し戻されない
    字数・行数・部数・訂正方法など、窓口で問題になる点をあらかじめ整えた状態でお渡しします。
  5. 他の窓口に振り分ける判断ができる
    裁判所を経由した手続に入っている場合や、相手方に弁護士が就いている場合は、弁護士へのご相談をご案内します。無理に自分の業務範囲に引き込みません。
  6. 相談件数に基づく相場観がある
    年間約1,000件の新規相談のなかで、同種の請求書は繰り返し目にしています。「これは典型的な形です」とお伝えできること自体が、不安の軽減につながります。

当事務所でお受けできること・できないこと

お受けできること お受けできないこと
・ご本人名義の通知書・回答書の作成支援
・請求内容の整理と、争点の切り分け
・時効援用通知の文案作成支援
・内容証明郵便の形式に適合させた文書の作成
・関係書類の保管方法、記録の残し方のご案内
・他士業・公的窓口へのご案内
・相手方との交渉の代理、示談・和解のあっせん
・支払督促に対する督促異議の申立て、訴訟対応
・法律相談としての個別具体的な法的判断の断定
・相手方に代わって請求を行うこと
・裁判所提出書類の作成(司法書士・弁護士の業務)

*上記の線引きは、行政書士法および弁護士法に基づくものです。紛争性が高まっている段階、相手方に弁護士が就いている段階では、弁護士へのご相談をご案内しています。

書面の写真1枚から、ご相談を受け付けています

「これは送るべきか」「無視でよいのか」の判断だけでも構いません。
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やってはいけない対応|相談で最も多い4つの失敗

  1. 書面に記載された番号に電話する
    電話をかけた時点で、その番号が使われていること、書面が届いていること、反応する人物であることが相手に伝わります。相手が本当に欲しい情報はここにあります。確認したいことがあっても、書面上の番号ではなく、自分で調べた公式の窓口にかけてください。
  2. 「少額だから」と一度だけ支払う
    支払った履歴は、次の請求の根拠になります。争うより払ったほうが早い、という判断が、結果として長期化を招きます。時効が問題になる債権では、一部の支払が債務の承認と評価されるおそれもあります。
  3. 感情的な返信をする
    「詐欺だろう」「訴えるぞ」といった返信は、相手にとっては単に反応があった事実にすぎません。加えて、こちらの発言として記録に残ります。反論したい気持ちは自然なものですが、書面で整理して伝えるほうが有効です。
  4. 書面を捨てる
    気持ちの上では捨ててしまいたくなりますが、後に相談・届出をする際、経緯を示す唯一の資料になります。封筒も含め、届いた順に保管してください。SMSやメールはスクリーンショットで残します。

*関連記事:嫌がらせ・近隣トラブル・つきまといに警告する方法SNSで知人に晒された場合の対処法

よくある質問

Q.無視し続けたら、本当に裁判になりますか?

A.契約の事実がない請求について、相手が訴訟を提起することは多くありません。訴訟には手数料と手間がかかり、主張を裏づける契約書等も必要になるためです。ただし、実在する債権者が請求している場合は、支払督促や訴訟に進むことがあります。「架空請求だから裁判にならない」ではなく、「相手が誰かによって変わる」とお考えください。

Q.家族に届いた請求書を、代わりに対応してよいですか?

A.事実確認や資料の整理をご家族が手伝うことは問題ありません。ただし、通知書はあくまでご本人の名義で作成し、ご本人の意思で差し出すものです。とくに高齢のご家族の案件では、ご本人の意思確認ができる状態かどうかが前提になります。当事務所でも、ご家族からのご相談を数多くお受けしていますが、書面はご本人名義で整えるかたちでご支援しています。

Q.警察や公的機関に相談できますか?

A.できます。詐欺が疑われる事案は最寄りの警察署または警察相談専用電話(#9110)へ、契約や取引に関する相談は消費者ホットライン(188)から最寄りの消費生活センターにつながります。いずれも、届いた書面を手元に置いて相談するとやり取りが早く進みます。国民生活センターのサイトでも、同種の手口の注意喚起が随時公表されています。

Q.すでに電話をかけてしまいました。どうすればよいですか?

A.まず、それ以降は着信に応答しないことです。かけてしまったこと自体で支払義務が生じるわけではありません。名前・住所・勤務先などを伝えてしまった場合は、今後の連絡が増える前提で、書面の保管と着信記録の保存を進めてください。金銭を支払った、口座情報を伝えたという場合は、金融機関への連絡を含めて早急にご相談ください。

Q.同じ内容の請求が何度も届きます。止められますか?

A.相手が実在の法人であれば、債務不存在と連絡停止を求める通知を送ることで、請求が止まる例は少なくありません。一方、相手の素性が確認できない場合は、通知を送ることが逆効果になることもあります。反復の程度と相手の実在性で判断が変わるため、届いた書面をまとめてご相談いただくのが確実です。

まとめ|今日やることを1つに絞る

  • 封筒に特別送達とある/差出人が裁判所 → 期限内に対応。弁護士・司法書士へ。
  • 契約の心当たりがある(解約漏れ・家族名義・古い債権) → 無視せず事実確認。時効の可能性も検討。
  • 差出人が実在せず、連絡先が携帯番号やSMSのみ → 連絡しない。書面は保管する。
  • 迷ったら、まだ何もしない。電話も支払いも、後から取り消せません。

身に覚えのない請求への対応で結果を分けるのは、文面の完成度ではなく、最初の分類を間違えないことです。分類さえ確定すれば、やるべきことは自然に1つに決まります。「自分のケースがどれに当たるか分からない」という段階が、いちばんご相談に適したタイミングです。

請求書の写真を送るだけ。分類と次の一手をお伝えします

無視してよいのか、通知を出すべきか、他の専門家に相談すべきか。
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執筆者

行政書士(登録番号:第22080418号)

契約書・通知書などの法的書面作成を専門とする行政書士。内容証明郵便は、年間新規相談約1,000件の実績。
*本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案について法的助言を行うものではありません。裁判手続に関する対応は弁護士・司法書士の業務範囲となります。

更新日:2026年7月25日

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