最終更新日:2026年7月25日
予約したレストランの前で、待ち続けた30分。返ってきたのは「ごめん、行けなくなった」の一言、あるいは既読すらつかない沈黙。数日後、店から届いたキャンセル料の請求。お金そのものよりも、一方的に時間と費用を奪われたことが納得できない——この記事を読んでいる方の多くが、いまその状態にあると思います。
結論から申し上げます。マッチングアプリのドタキャンで相手に請求できるのは、「実際に支払いが発生した費用」がある場合に限られます。ドタキャンされたこと自体への慰謝料は、この類型ではまず認められないと考えておくのが現実的です。
ただし、これは「泣き寝入りするしかない」という意味ではありません。キャンセル料や交通費を実際に負担したのであれば、請求の土台は立ちます。問題は、その土台を証拠で支えられるか、そして相手を特定できているかの2点です。この記事では、その2点を自分で判定できるところまで具体的に整理します。
この記事でわかること
まず、期待値を正確に合わせておきます。ドタキャン被害の相談で最も多い誤解が、「精神的苦痛に対する慰謝料を請求できるのではないか」というものです。しかし、交際関係にない相手との一度の約束が守られなかったという事実だけで慰謝料が認められる可能性は、実務上きわめて低いと考えられます。裁判所が慰謝料を認めるのは、法律上保護される利益が侵害されたと評価できる場面であり、初対面の食事の約束が破られたことは、通常その水準に達しないと判断されやすいためです。
一方で、現実に支払いが発生した費用は話が別です。次のようなものが該当します。
これらは金額が領収書や明細で客観的に示せるため、請求の対象として組み立てやすい費目です。とはいえ、費用が発生していれば当然に請求が通る、というわけでもありません。「その費用が発生することを、相手が事前に認識できていたか」という前提条件が重要になります。この前提をどう証拠で示すかが、この記事の中心テーマです。
読み進める前に、ご自身の状況を次の表で判定してください。以降の各セクションは、この判定結果に応じて重点的に読む場所が変わります。
| 型 | 当てはまる状況 | 取りうる進め方 |
|---|---|---|
| A型 請求を組み立てやすい |
実費が発生している/予約したことを相手が知っていた/やり取りが残っている/相手の氏名か住所の手がかりがある | 証拠を整理し、請求通知書の送付を検討できる段階 |
| B型 要素が欠けている |
実費はあるが、予約の共有が曖昧/やり取りの一部しか残っていない/相手の情報が断片的 | まず証拠の補強と情報の整理。送付の可否はその後に判断 |
| C型 金銭請求は困難 |
実費が発生していない/相手が退会済みで氏名も住所も一切不明/正当な理由のある欠席 | 金銭回収以外の対処へ切り替える(後述) |
* この判定はあくまで目安です。実際には、やり取りの文言ひとつで評価が変わることがあります。
「自分はA型・B型・C型のどれなのか」が判断できない方へ
やり取りのスクリーンショットと、発生した費用の金額。この2つがあれば、請求を組み立てられる状況かどうかの見立てをお伝えできます。当事務所は内容証明郵便に関する新規相談を年間約1,000件お受けしており、ドタキャン・約束不履行の類型も扱っています。まずは現状の整理からで構いません。
* 当事務所がお受けするのは、ご本人名義の通知書・回答書の作成支援です。相手方との交渉の代理は行っておりません。
「約束したのだから、破ったら賠償すべきではないか」。感覚としてはもっともです。しかし法律の枠組みでは、すべての約束が同じ扱いを受けるわけではありません。
法的な義務を発生させる合意を契約といいますが、日常の約束のすべてが契約として扱われるわけではありません。友人との食事の約束、知人との待ち合わせ、そしてマッチングアプリで知り合った相手と会う約束は、一般に「社交上の約束」として、法的な債務を発生させる合意とは評価されにくい領域に置かれています。
理由は単純で、当事者に「守らなければ法的責任を負う」という意識がないのが通常だからです。もし社交上の約束がすべて契約になるなら、遅刻や体調不良によるキャンセルのたびに損害賠償の話が発生することになり、社会生活が成り立ちません。そのため、単に「会う約束をした」という事実だけで請求を組み立てるのは、出発点として弱いと考えておく必要があります。
押さえておきたい考え方
請求の根拠になりやすいのは「約束を破られたこと」そのものではなく、「相手の言動を信じて支出した費用が無駄になったこと」です。着眼点を、約束そのものから“出ていったお金”へ移すと、主張が組み立てやすくなります。
検索で「ドタキャン 犯罪」と調べた方も多いと思います。率直にお答えすると、単に約束の時間に現れなかったというだけでは、刑事上の犯罪に当たると評価されるのは難しいと考えられます。約束を守らないことを直接処罰する規定は存在せず、詐欺罪などに問うには、最初から相手をだまして財産上の利益を得る意図があったといえるだけの事情が必要になるためです。
ただし、ドタキャンが単独の出来事ではなく、次のような別の要素と結びついている場合は、評価が変わる可能性があります。
これらは「約束を破られた」問題ではなく、別の被害類型に移行しています。該当する場合は、金銭請求より先に警察への相談や、行為の中止を求める通知を検討すべき局面です。刑事事件に当たるかどうかの判断は捜査機関が行うものであり、この記事で断定することはできませんが、少なくとも「単なるドタキャンとして処理してはいけないケースがある」ことは知っておいてください。
社交上の約束であっても、費用に関する具体的な取り決めが交わされていた場合は別です。たとえばやり取りの中で、次のような発言が残っているケースです。
こうした発言は、単なる社交的なやり取りを超えて、費用負担についての具体的な合意があったと主張しうる材料になります。相手が予約の存在と金額の発生を認識していたことを示す証拠にもなるため、該当するメッセージが残っている方は、この後の「証拠」のセクションを特に丁寧に読んでください。
ここからが実務の中心です。「請求できるかどうか」は、状況そのものよりも「その状況を示す証拠があるかどうか」で決まります。ケースごとに、必要な証拠を対応させて整理します。
最も相談が多い類型です。この場合に主張の強さを左右するのは、相手が「予約が入っていること」と「キャンセルすると料金が発生すること」を知りうる状態だったかという点です。
| 状況 | 主張の立てやすさと必要な証拠 |
|---|---|
| 店名・日時をやり取りで共有し、相手が了承していた | 主張しやすい。店名と日時が写ったメッセージのスクリーンショット、予約確認メール、キャンセル料の請求書 |
| キャンセル料が発生する旨も伝えていた | さらに主張しやすい。上記に加え、キャンセル規定に言及したメッセージ |
| 「予約しておくね」とだけ伝えていた | 中程度。予約の存在は共有されているが、金額発生の認識は争われる余地がある |
| 相手に何も伝えず、自分の判断だけで予約した | 弱い。相手が費用発生を予見できなかったと反論されやすい |
遠方から向かうケースです。ここでの分かれ目は、相手が「あなたが遠方から移動してくること」を認識していたかです。「地元で会いましょう」という前提のやり取りしかない状態で、実は隣県から新幹線で向かっていた、という場合は主張が難しくなります。
逆に、「◯時の新幹線で向かいます」「前泊するのでホテルを取りました」といったメッセージを送っており、相手がそれに応答していれば、相手はあなたの支出を認識していたことになります。この場合、払い戻しができなかった分について請求を組み立てる余地が出てきます。なお、払い戻しや変更が可能だった分は、請求できる金額から差し引かれるのが通常の考え方です。実際に損をした金額のみを積み上げてください。
最も主張しやすい類型です。「行けなくなったら払う」「キャンセル料はこちらが持ちます」といった発言が残っていれば、費用負担についての合意があったと主張する土台になります。この場合は、キャンセル料が発生する店であること・実際に発生した金額・その支払いの事実を証拠でつなげば、通知書の骨格はほぼ完成します。
注意:金額を上乗せしない
「時間を無駄にした分」「精神的苦痛」を上乗せして請求すると、相手に「不当な請求だ」という反論の余地を与えます。実費だけを請求するほうが、結果的に応じてもらえる可能性は高くなります。金額の正確さは、それ自体が交渉上の武器です。
誠実にお伝えします。ドタキャンの相談のうち、金銭請求として成立しにくいケースは相当数あります。該当する場合に無理に請求を進めても、時間と費用を重ねて消耗するだけになりかねません。当てはまるかどうかを先に確認してください。
予約をしていなかった、キャンセル料が発生しない店だった、電車代も定期券の範囲内だった。この場合、請求できる「損害」が存在しないことになります。時間を無駄にしたという損失は実感として大きいものですが、金銭に換算して請求する枠組みには乗りにくいのが実情です。
急病、事故、家族の緊急事態など、やむを得ない事情でのキャンセルは、相手を責める根拠になりにくくなります。ただし「体調が悪い」と言いながらSNSに外出中の投稿を上げていたなど、説明と実際の行動が食い違う場合は評価が変わりえます。相手の説明を鵜呑みにも頭ごなしの否定にもせず、やり取りと客観的事実を並べて確認することが先決です。
これが最大の壁です。アプリ内のニックネームしか知らず、退会されて連絡手段も断たれた場合、請求書を届ける宛先そのものが存在しません。この点は次のセクションで詳しく扱います。
請求が難しいと判断した場合でも、次の対応には意味があります。
状況が「ドタキャン」の枠を越えている方はこちら
この記事で最も急ぐべき作業です
アプリ内のメッセージは、相手が退会・アカウント削除をした瞬間に閲覧できなくなることがあります。あなたが「請求できるかどうか」を検討している間に、証拠が消えてしまうことは珍しくありません。読み進める前に、まずスクリーンショットを撮ってください。
保存すべきは会話の一部ではなく、前後の文脈を含めた連続した流れです。都合の良い箇所だけを切り取ると、相手から「その前にこう言っていた」と反論された際に対応できません。次の順序で保存してください。
印刷を勧めるのは、後日に通知書へ添付する可能性があるからです。画面のまま持っているだけでは、書面のやり取りに使えません。
請求する金額には、必ず裏付けが必要です。次のいずれかを揃えてください。
| 費目 | 用意する書類 |
|---|---|
| 予約キャンセル料 | 店舗からの請求書・領収書、予約確認メール、店舗のキャンセル規定が分かるページの保存 |
| 交通費 | 切符・特急券の控え、ICカードの利用履歴、クレジットカード明細、高速道路の利用明細 |
| 宿泊費 | 予約サイトの予約確認画面、キャンセル料の請求画面、決済明細 |
| 立替えた金銭 | 振込明細、送金アプリの履歴、購入したチケットの控え |
意外に見落とされがちですが、自分がすでにどこまで相手の情報を持っているかを書き出す作業は重要です。次の項目について、分かる範囲を紙に書き出してみてください。
この棚卸しをすると、「何も分からないと思っていたが、実は本名と勤務先を聞いていた」というケースが一定数出てきます。相手の特定可能性は、思い込みではなく整理して確認すべき項目です。
証拠は揃った。次に何をすればいいか分からない方へ
スクリーンショットと領収書が手元にある状態は、すでに大きく前進しています。あとは「その材料で何をどこまで主張できるか」を整理する作業です。書面の形にする前の段階でご相談いただければ、足りない資料と、書面に載せるべき項目をお伝えできます。
最初に現実をお伝えします。内容証明郵便は、宛先の住所が特定できなければ送ることができません。郵便物である以上、届け先のない書面は存在しえないためです。「請求したい相手がどこの誰か分からない」という状態は、そのままでは手続きの入口に立てません。
マッチングアプリの運営会社に「相手の氏名と住所を教えてほしい」と依頼しても、応じてもらえないのが原則です。利用者の個人情報は、法令に基づく正当な手続きがない限り第三者に提供されません。通報を受けて運営側が利用停止などの措置を取ることはあっても、その内容や相手の情報が申告者に開示されることは通常ありません。
インターネット上の権利侵害について、発信者の情報開示を求める制度は存在します。ただしこの手続きは、権利が侵害されたことが明らかであることなど、法律上の要件を満たす必要があります。ドタキャンによる実費の未回収という事情で、この要件を満たすと評価されるのは難しいと考えられます。
また、この開示手続きの申立てや、それに続く訴訟の代理は弁護士の業務です。行政書士がこれを取り扱うことはできません。この点は正確にお伝えしておきます。
お伝えしておくべきこと
「行政書士なら住所を調べられるのではないか」というお問い合わせをいただくことがありますが、私的な相手方特定を目的として、行政書士が職務上請求により住民票等を取得することはできません。この制度は本来の業務に必要な範囲で用いられるものであり、そこから外れた利用は認められていません。当事務所ではお受けしておりませんし、他所でそうした案内を受けた場合も慎重にご判断ください。
壁は高いものの、次のいずれかに当てはまるなら、まだ道は残っています。
正直に申し上げると、相手を特定できずにここで止まるケースは実際に少なくありません。ただ、「特定できないから何もできない」と「特定の手がかりを整理しないまま諦める」は別です。前掲の棚卸しを一度行ってから判断してください。
住所の特定でつまずいている方へ
内容証明の住所がわからない時の対処法
住所が不明な場合に取りうる考え方と、避けるべき方法をまとめています。
通知書は、自分で書いて送ることもできます。法律上、専門家に依頼しなければならないという決まりはありません。そのうえで、専門家が作成した書面と自作の書面では、実際に届いた後の展開が変わることがあります。理由は次の4点です。
ドタキャンをした側は、多くの場合「どうせ何もしてこないだろう」と考えています。感情的なLINEが何通届いても、その予測は変わりません。ところが、整った体裁の書面が郵便で届き、作成に専門家が関与していることが分かると、相手の認識は一段階変わります。「面倒なことになった」と受け止められた時点で、支払いに応じるインセンティブが生まれます。金額の多寡よりも、この認識の変化が結果を左右する場面は多くあります。
これが最も実務的な価値かもしれません。怒りを抱えた状態で自分で書くと、どうしても圧力をかける表現が混じります。「勤務先に連絡する」「SNSに書く」「家族に知らせる」といった記述は、請求する側が加害者側に回ってしまう危険がある表現です。相手がその書面を保存して逆に主張してくる展開も現実に起こります。第三者が文面を作ることで、この種の表現は構造的に排除されます。
自分で書くと、経緯の説明が長くなり、肝心の「いくらを、何の根拠で、いつまでに」が埋もれがちです。通知書は感情を伝える手紙ではなく、請求の根拠と金額を相手に理解させるための文書です。どの事実を書き、どの資料を添えるかを整理することで、書面としての説得力が変わります。また、後日さらに手続きを進めることになった場合にも、整理された書面は出発点として機能します。
見落とされがちですが、これも大きな価値です。通知書を送るということは、差出人として自分の氏名と住所を相手に知らせることでもあります。相手の言動によっては、それ自体がリスクになりえます。「送るべきか、送らないほうがよいか」を判断するための材料を得られること自体が、相談する意味のひとつです。当事務所では、結果として「今回は送らないほうがよい」とお伝えすることもあります。
行政書士がお受けできる範囲
お受けするのはご本人名義の通知書・回答書の作成支援です。相手方との交渉を代理すること、示談や和解のあっせんを行うことはできません。すでに紛争が顕在化している場合や、相手方に弁護士が就いた場合は、弁護士へのご相談をご案内します。
* 作成費用の目安:【料金レンジ:要確定】
ご本人名義の通知書作成をご依頼いただけます
当事務所は契約書・通知書などの法的書面の作成を専門としており、内容証明郵便に関する新規相談を年間約1,000件お受けしています。「送るべきかどうか」の判断段階からご相談いただけます。やり取りのスクリーンショットと、発生した費用の金額をお手元にご用意ください。
通知書は自由に書ける文書ですが、含めるべき項目は決まっています。次の5点が揃っていれば、書面としての機能を果たします。
| 要素 | 書き方のポイント |
|---|---|
| 1. 当事者の特定 | 相手の氏名・住所、自分の氏名・住所。相手の情報が不完全でも、判明している範囲で正確に記載する |
| 2. 約束の内容と日時 | いつ、どのアプリで知り合い、いつ何を約束したか。日付を具体的に。感想や評価は書かない |
| 3. 損害の内訳と金額 | 費目ごとに金額を分けて記載し、合計額を明示。領収書等の写しを添付する旨を書き添える |
| 4. 支払期限と振込先 | 期限は到達から2週間程度が一般的。金融機関名・支店名・口座番号・口座名義を正確に |
| 5. 回答がない場合の対応 | 最も抑制的に書く箇所。実行する予定のない措置を予告しない。「別途対応を検討します」程度で足りる |
実際の文例です。【 】の部分がご自身の情報に置き換える箇所です。
通知書
【相手方氏名】 殿
【相手方住所】
私は、【アプリ名】を通じて貴殿と知り合い、【日付】に【店舗名】において会食する旨をお約束いたしました。
当該会食にあたり、私は貴殿の了承のもと、【日付】に同店の予約を行いました。同店には所定のキャンセル規定があり、その旨は事前にお伝えしております。
しかしながら、貴殿は当日【時刻】に至るまでご来店されず、その後の連絡もございませんでした。この結果、私は同店に対しキャンセル料として金【金額】円を支払うこととなりました。
つきましては、下記のとおり実費相当額のお支払いをお願い申し上げます。
記
1 請求金額 金【金額】円
内訳 予約キャンセル料 金【金額】円
(【店舗名】発行の領収書の写しを添付いたします)
2 お支払期限 本書面到達後2週間以内
3 お振込先 【金融機関名】【支店名】 普通【口座番号】 口座名義【口座名義】
本書面到達後、上記期限までにお支払いまたはご連絡がない場合には、別途対応を検討いたします。
なお、本書面は貴殿を非難する目的で送付するものではなく、現に発生した費用の精算をお願いするものです。ご事情がある場合は、期限までにご連絡ください。
【日付】
【自分の住所】
【自分の氏名】
絶対に書いてはいけない表現
これらの表現は、相手の弱みに乗じて支払いを迫る行為と受け取られかねません。数千円から数万円という金額に対して過度に強い圧力をかけると、請求する側の立場が一気に悪くなるおそれがあります。書面は形に残るため、相手に反撃の材料を渡すことにもなります。
もうひとつ、送る前に必ず考えておくべきことがあります。通知書を送れば、自分の住所と氏名が相手に伝わります。相手が執着的な言動を見せていた場合、この情報が新たなリスクになりえます。ドタキャンをした相手が、その後に嫌がらせや中傷に転じるケースは実際に存在します。金額と、そのリスクを天秤にかけたうえで判断してください。判断に迷うのであれば、送る前の段階でご相談ください。
通知書で相手に警告する方法をより詳しく
ハラスメント・誹謗中傷は内容証明郵便で解決
内容証明郵便がどのように機能するのか、基本的な仕組みと書き方をまとめています。
通知書を送っても無視される可能性は、当然あります。その先に用意されている主な手続きが、少額訴訟や支払督促といった裁判所の制度です。ただし、これらを利用するかどうかは冷静な損得計算が必要な場面です。
申立てには手数料や郵便費用がかかり、書類の作成、裁判所への提出、期日への出頭といった手間も生じます。請求額が数万円の場合、費用と時間を積み上げると、回収できる金額を実質的に上回ってしまうことも珍しくありません。相手が支払能力を欠いていれば、判決を得ても回収できないという結果もありえます(各手続きの手数料や要件は変更されることがあるため、利用の際は裁判所の公表情報をご確認ください)。
そのうえで申し上げますが、「割に合わないから諦めるべきだ」と言いたいわけではありません。「一方的にやられたまま終わらせたくない」「請求したという記録を残したい」という動機は、費用対効果とは別の次元で十分に合理的です。実際、通知書を送った時点で相手が支払いに応じ、それで区切りがついたというケースは相当数あります。多くの方にとって現実的な落としどころは、「きちんとした書面を一度送る。そこまでやって応じなければ手放す」という線引きです。
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チケット詐欺は泣き寝入りしない!お金を取り戻す全手順
相手にお金を渡してしまった、立て替えたまま返ってこないという場合はこちらをご覧ください。
Q. 相手がすでにアカウントを削除しています。もう何もできませんか。
アプリ内のやり取りが閲覧できなくなっている場合、証拠の面で不利になります。ただし、LINEを交換していた、電話番号を知っている、本名を聞いていたといった手がかりが残っていれば、進められる余地はあります。まず手元の情報を棚卸ししてください。なお、退会前にスクリーンショットを保存していれば、それは有効な資料です。
Q. 逆に、自分がドタキャンした側で請求書が届きました。払うべきですか。
届いた書面を無視するのは避けてください。まず、請求の根拠と金額の内訳、そして領収書等の裏付けが示されているかを確認します。実際に費用が発生しており、あなたがその発生を認識できる状況だったのであれば、支払いを検討する場面もあります。一方、金額の根拠が不明確な場合や、実費を超える請求が含まれる場合は、その旨を書面で回答することができます。回答書の作成もお受けしています。
Q. 内容証明でなく、普通郵便やLINEで請求してもいいですか。
請求すること自体は可能です。内容証明郵便の価値は、いつ・どのような内容の書面を差し出したかを記録として残せる点にあります。相手が受け取っていないと主張する余地をなくしたい場合や、書面の重みを伝えたい場合に選ばれます。金額が小さく、相手と連絡が取れている段階であれば、まずメッセージで請求の意思を明確に伝えるという順序も現実的です。
Q. 請求できる期限はありますか。
請求権には一定の期間制限が設けられており、時間の経過とともに主張が難しくなる可能性があります。それ以上に実務的な問題は、時間が経つほど相手の連絡先が使えなくなり、記憶も証拠も曖昧になることです。動くのであれば早いほうが有利です。
ここまでの内容を整理します。マッチングアプリのドタキャンで請求できるかどうかは、次の2点でほぼ決まります。
この2点が揃っているなら、証拠を整理して通知書を送る段階です。揃っていないなら、無理に進めるより手元の情報を棚卸しし、それでも難しければ記録だけ残して切り替える。どちらの結論であっても、曖昧なまま抱え続けるより、判断をつけたほうが前に進めます。そして、いま最優先で行うべきことは変わりません。やり取りのスクリーンショットを、いま保存してください。
請求できる状況かどうか、まずご相談ください
当事務所は契約書・通知書などの法的書面の作成を専門とする行政書士事務所です。内容証明郵便に関する新規相談は年間約1,000件。ご本人名義の通知書作成のほか、「送るべきかどうか」の判断段階からご相談いただけます。やり取りのスクリーンショットと発生した費用の金額をご用意のうえ、ご連絡ください。
* お受けするのはご本人名義の書面作成支援です。相手方との交渉の代理、示談のあっせんは行っておりません。紛争が顕在化している場合や相手方に弁護士が就いている場合は、弁護士へのご相談をご案内します。
執筆者
行政書士(登録番号:第22080418号)
契約書・通知書などの法的書面作成を専門とする行政書士。内容証明郵便は、年間新規相談約1,000件の実績。
お受けする業務はご本人名義の書面作成支援に限られ、相手方との交渉の代理や示談のあっせんは行っておりません。
* 本記事は一般的な情報の整理であり、個別の事案についての法的評価を確定するものではありません。
* 記載内容は2026年7月25日時点の情報に基づきます。制度や手数料は変更される場合があります。
最終更新日:2026年7月25日